Drager
Savina300図;外観写真
1.特徴
 Savina300はEvitaXLの下位機種に該当する。また、Savinaの改良版である。従来のSavinaは利用できるモードなどが限定されており、臨床応用はある程度限られていた。しかし、Savina300になりブロアー駆動型の簡易機とはいえ、基本性能はEvitaXLにかなり近づいたものになっている。換気モードだけで言えば、PPS以外の臨床上に必要と思われる全モードを搭載しているので、EvitaXLやV500の至高の性能まで必要としないユーザーには、とてもお買い得なモデルである。当然NIVも可能である。およそ体重3kg以上小児・成人を対象とする。新生児への使用は推奨されない。呼気弁駆動系はV500はVN500と共通設計されているので応答性が高い。バッテリー駆動は換気条件にもよるが45分程度は可能である。ブロアー用の細菌フィルターも装着されているので、パンデミック対策用機器としても有益である。2013年4月よりブロアーのサウンドボックスが改良されて、さらに静かになった(騒音-3dB)。
 
1)利用できるモード
 VC-SIMV
 VC-AC
 VC-CMV
 VC-MMV
 PC-BIPAP
 PC-AC
 PC-APRV
 SPN-CPAP/PS
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付加機能
 AutoFlow
 NIV
 Sigh
 Apnea Backup Ventilation
 
2)基本データー
最大吸気ガス流量....250LPM
最大換気数................120 BPM
トリガー感度............1-15LPM
 
2.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説
 Savina300もV500同様にメインプロセッサーが吸気系・呼気系を協調作動させて気道内圧を精密制御することであらゆる換気モードを作り出している。このBIPAP機構は、吸気系による加圧と呼気系によるリリーフのバランスで患者回路圧を調節しているので、オーバーシュートやアンダーシュートの少ない圧制御が可能になっている。
2)機械的機構の特徴
 ブロアーは吸気・呼気に関わらず定速回転(4000-12000rpm)しており、バイパスバルブの開閉で吸気圧を調節している。したがって吸気系の反応速度はV500 と遜色のない性能となっている。換気条件によってブロアーの回転数を増減して節電している。ブロアー方式なので、中央配管によるガス供給より多くの流量を供給できるので、意外なことに最大吸気ガス流量はEvitaXLやV500より多い。
3)ガス流量計測
 呼気側のフローセンサーはV500と同じ仕様である。ホットワイヤー式であり、消耗品扱いである。
4吸気バルブ
 Savina300には一般的な吸気バルブはなくブロアーの前後でバイパス量を調節する比例制御弁が吸気圧を調節する役割を担っている。全閉でブロアーのガスがすべて患者回路に流れる。全開時にはブロアーの出力はすべて入力に戻るのでブロアー出力はゼロになり、吸気フローはゼロになる。
5)呼気バルブ(図;呼気弁の構造
 呼気弁は一連のDrager製品と同様に脱着式ユニット構造が用いられている。V500と共通仕様になっている。これは電位弁によるダイレクト駆動されており、従来のEvitaXLやSavinaよりさらに応答性が改善されている。
3.ニューマティック回路(図;ニューマティック回路図
 高圧酸素源はV7.1-V7.8の電磁弁により酸素流量を調節されて混合チャンバーVolumeに入る。低圧酸素源を利用する際にはフィルターF5と逆流防止弁D6を経て混合チャンバーに入る。混合ガスは遮音材 SD1、SD3、ブロアーBlower、遮音材SD4、冷却器cooler、遮音材SD2、フィルターF4、フローセンサーS1を経由して患者回路の吸気となる。吸気圧はバイパスバルブV1でバイパス量を調節して吸気ガス流量が調節される。患者回路内圧は吸気側センサーS4.1と呼気側センサーS4.2で計測される。V6.1とV6.2は自動校正用のゼロ点校正弁である。呼気弁はV3で制御される。逆流防止弁D3を経て呼気フローセンサーS2で計測されて大気に排出される。
 ネブライザー用のガスは定流装置R4と電磁弁V5で調節される。当然のこととして高圧酸素源が接続されていない場合には、ネブライザーはできない。
4.制御ソフト
1)トリガー方式
 フロートリガー方式で、感度は1-15LPMの範囲で設定できる。リーク補正機能がある。 誤動作を防ぐ為に0.20LPMの流量条件を満たした時点で流量計測を開始する。フロー条件もしくはボリューム条件35mlの吸気を認識した時点でトリガーになる。
2)呼吸モード
 ドレーゲル社のV500 やVN500、EvitaXLなどと同じ。
(1)VC-SIMV
 V500 と同じ。通常はAutoFlowをONにして使用する。
(2)VC-AC/CMV
 V500と同じ。通常はAutoFlowをONにして使用する。
(3)VC-MMV
 V500と同じ。通常はAutoFlowをONにして使用する。
(4)PC-AC(図;PC-AC)
 V500と同じ。
(5)PC-BIPAP
 V500と同じ。
(6)PC-APRV(図;APRV画面
 V500と同じ。AutoRelease機能はない。
(7)SPN-CPAP/PS
 V500 と同じ。
 
3)付加機能
(1)無呼吸バックアップ換気(図;アプネア換気
 V500 と同じ。
(2)吸気ターミネーション
 V500 と同じ。
(3)深呼吸
 V500 と同じ
(4))AutoFlow
 V500 と同じ。標準的にONで使用する。
(5) NIV
 V500と同じ。
(6)リーク補正
 V500 と同じ。
5.計測機能
(1)intrinsic PEEP(図;内因性PEEP測定
 呼気終末において吸気弁・呼気弁を閉じて内因性PEEP(intrinsic PEEP)を測定する。interval 1期間は圧変動がなくなるまでで、短くても0.5秒で、長くても3秒(直径22o患者回路選択時)もしくは1.5秒(直径11mm患者回路選択時)まで。interval 2は呼気フローが0LPMになった時点で、最大7秒後(直径22o患者回路選択時)、3.5秒後(直径11mm患者回路選択時)までである。
(2)LPO(低圧酸素源)(図;LPOフロー設定図
 低圧酸素源を直接接続することで、中央配管に依存しない環境で酸素濃度を高められる。分時換気量によって供給酸素流量と吸気酸素濃度の関係は図に示したようになる。
(3)ETCO2
 CO2測定用のセンサーを装着するとETCO2を測定できる。CO2総排出量も表示できるのでエネルギー消費量が推定できる。
(4)インターフェース
 シリアルインターフェースを介してMEDIBUSやMEDIBUS.Xプロトコールでデータ転送が可能である。
 
(5)ネブライザー
 高圧酸素源接続時にはネブライザーを利用可能である。低圧酸素源では利用できない。
6.操作方法図;画面構成
 基本はEvitaXLやV500 と同じである。タッチパネルで選択し、ロータ−リノブで(必要なら数値選択し)確定する操作体系になっている。インターフェースは直感的に理解しやすい構成になっているので予備知識がなくても簡単に操作できる。換気作動中のメイン画面では、画面表示はABCDにフィールドが別れている。Aに患者カテゴリ・モード・換気の状況・アラーム状況などが表示される。Bにはグラフィックやループ・トレンドなどを表示する。Cにはメニューバーがあり、機能設定に使用する。Dは作動中の換気モードに対応したダイレクト設定ができる。GUIが優れているので画面の表示を見れば、簡単に操作可能である。
 ます電源を入れるとスタート/スタンバイモード画面が現れる。スタートを確定すると前回の換気条件でスタートする。必要があれば、患者回路の直径選択(22mm or 11mm)、チューブモードor NIVモード、加湿器(加温加湿器 or HME or なし)、換気設定を変更する。 
7.モニター、アラーム機能
 基本的にEvitaXLやV500 と同じ。メッセージは3段階あり、緊急度の少ない順に勧告(advisory)、注意(caution)、警告(warning)がある。それぞれメロディーが変化する。
8.ディスプレー機能
1)ディスプレー(図;ディスプレー表示例)
 Windowsパソコンのように多彩な画面が用意されている。現時点ではこれ以上必要がないほどである。
9.患者回路構成、加湿器図;患者回路例
 患者回路内の抵抗になるので、吸気側・呼気側にフィルターを入れるのは推奨されない。吸気側ユニットも脱着して洗浄滅菌できる構造になっている。
10.日常のメンテナンス
1)呼気弁・吸気ユニット
 Savina300とV500とで共用できる。V500では個々の部品のIDが読み込まれるがSavina300では読み込まれない。
2)フローセンサー
 呼気側のフローセンサーは消耗品扱いである。V500と共通仕様である。起動時や一定の時間毎に自動校正される。なお、センサーは物理的には弱いが、超音波洗浄はできる。フローセンサーは消耗品扱いである。
11.定期点検
1)酸素センサー
 エラーメッセージがでれば交換。
2)冷却フィルター
 1ヶ月ごとに洗浄する。最低限、年に1回は交換。
3)呼気弁のダイアフラム
 最低、12ヶ月に1回は交換。
4)アラーム回路のNiCd電池
 2年に1度交換。
5)本体
 1年に1回、技術サービスによって作動点検、保守をする
12.今後の課題
 基本的にV500と同じ。