ResMed Australia
NIP Nasal V(Steller150)
1.特徴(図;NIP Nasal Vの外観
 1989年創業のResMed社はオーストラリアのシドニーに睡眠時呼吸障害の治療器メーカーとして誕生した。同社はその後に多くの会社を吸収して、多様な製品をそろえるグローバル企業に成長した。ResMed Australia社製のNIP Nasal V(Steller150)人工呼吸器は、日本人向けの鼻マスクと組み合わせて帝人より販売されている。日本仕様はNIP nasalの登録商標になるが、海外ではSteller150として販売されている。対象は体重が13kg以上で、自発呼吸のない患者は適応外になる。小型軽量で波形モニターやマスクフィットの評価機能など多機能かつVsyncやTiControlなどによる高性能がセールスポイントである。ちなみにResMed社にはラインアップには、PSVデバイスのSteller150、換気デバイスのクリーンエアシリーズ、ASVデバイスのVPAPアダプトがあるが、Stella150以外はフクダライフテック扱いになる。
2.性能
 モード...............................CPAP,S,T,S/T,PAC,iVAPS
 吸気ガス流量...................150 LPM 以上
 呼吸回数............................5-60BPM
 吸気時間............................0.2-4.0sec.
 EPAP...................................2-25cmH2O
 IPAP....................................2-40cmH2O
 重量....................................2.1Kg
 バッテリー作動時間  2時間程度
 消費電力............................AC100-240 v, 50-60Hz, 2.2A 最大65W
 外部電源............................DC24v, 3A
 
3.機構の概略
1)構造
 機構の詳細については全く公表されていない。ResMedではlow inersiaと呼ぶモーター(図;モーターとブロアー)の回転数を変化させて吸気ガス圧を調整している。この方式では駆動系の慣性モーメントによるレスポンスの遅れが危惧されるが、社内資料によると遜色がないというより、かなり優秀のようである。ただし、残念ながらこれらのデータは公開されていない。空気回路の経路は単純で簡単に交換可能な部品で校正されているので修理も簡単にできる(図;構造図1構造図2)。これらの空気回路の上に制御ボードと液晶ディスプレーを搭載した構造になっている(図;構造図3)。
2)モード
 CPAP,S,T,S/Tモードは標準的な仕様であり、特に説明を必要としない。PACモードは一般的に言うPCVモードで、iVAPSはVolume Supportであるが、1回換気量は目標肺胞換気量から決定される(図;iVAPSの説明)。換気回数はサポート回数で設定した値の2/3が初期値に選ばれるが、サポート回数を最大値として徐々に増加する。自発呼吸を検出すると再びサポート回数の2/3に戻る(図;換気回数とサポート回数)。
 
目標肺胞換気量 =( 1 回換気量−死腔量) × 呼吸回数
= 分時換気量−( 死腔量 × 呼吸回数)
また、標準体重(IBW)に応じた平均換気量(平均Vt[ ml/kg])が計算される。
平均Vt =1 回換気量 ÷[ 48 + 0.91 × (身長 − 152.4)] 
3)TiMax
 TiMaxとはPSVでの最大吸気時間を規定することで、PSVがリークなどにより終了しない事を防ぐ意味がある(図;TiMaxの説明)。
4)VSync(図;VSyncの解説
 これはVsyncととても紛らわしいが、VSyncはResMedの登録商標で、回路リークに対して自動的に連続的にベースフローを調節して吸気フローに付加していく機能である。ちなみにVsyncはVIASYS社の人工呼吸器の機能で、AutoFlowやPRVCと同義語である。
4.操作(図;操作パネル)
1)医療者モード
 電源スイッチは装置背面にある。電源投入後にプッシュダイヤルと設定メニューボタンを同時に3秒以上押し続けると医療者モードに切り替わる。次に医療者モードが解除される時間を選択する。もう一度プッシュダイヤルと設定メニューボタンを同時に3秒以上押し続けると患者モードに切り替わる。「設定」ボタンを押すと設定画面に切り替わる。「モニタリング」ボタンを押すとモニター画面を表示する。「情報」ボタンは情報メニューを表示する。メニュー構造は(図;メニュー構造)に示した。以下に操作画面例を提示する(図;基本設定画面アラーム設定画面1アラーム設定画面2情報画面1情報画面2,)。他にも、ライズタイム(150-900ms)、フォールタイム(100-400ms)などを設定できる。
2)患者モード
 患者モードでは、患者が操作できるのは電源ON/OFFとSTART/STOPだけである。
5.モニター、アラーム
 換気パラメーターの実測値、患者の波形、SpO2、酸素濃度などをモニターできる。 アラームには、アラームオフ、低換気、高リーク、マスク閉塞、高圧、低圧、高呼吸回数、低呼吸回数、低SpO2、高FiO2、低FiO2、無呼吸、などがある。USBメモリーにイベント情報など情報の内容を書き込むことができる。
6.メンテナンス
 エ日常的にマスクとチューブを点検、清掃、滅菌する。6ヶ月ごとにエアーフィルタを交換する。1年に1回は定期点検を受ける。バッテリーは2年に1回は交換する。
7.欠点
 ResMed社は技術公開に対する姿勢が極めて秘密主義的である。技術資料がほとんど公開されていないので、性能的には問題がないにせよ、医療機器としては重大な欠点があると言わざるを得ない。