Drager
Carina図;外観写真
1.特徴
 Carinaは検査や処置時に使用する軽量(5.5Kg)・コンパクト(385*175*275mm)な簡易人工呼吸用として、もしくはNIV用の人工呼吸器である。1回換気量が100mL以上の患者が対象となり、状態が落ち着いた亜急性期が適応である。呼気弁付き患者回路とリークバルブ付き患者回路を選択できる。AutoFlow・VGが使用できる。内蔵バッテリーもしくは外部バッテリーでも駆動可能である。内蔵バッテリーで約60分作動できる。最新バージョンはSW3.2nである。
2.性能
1)利用できるモード
 VC-SIMV
 VC-AC
 PC-SIMV
 PC-AC
 SPN-CPAP/PS(VG)
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付加機能
 AutoFlow
 Ramp
 NIV
 AutoAdapt
 Apnea Backup Ventilation
 ネブライザー
 
2)基本データー
最大吸気ガス流量....180LPM
最大換気数................50 BPM
トリガー感度............Normal,Sensitive,OFF
3.制御機構の概略
1)概略
 Carinaではブロアーの回転数(4000-35000rpm)が変化することで気道内圧の変化を作り出す。ブロアーの慣性質量は小さいので応答性は良いが、Savina300のようにブロアーが定速回転してる機器に比べるとレスポンスが落ちる。呼気弁を利用する患者回路とリークバルブを利用する回路を選択できる(図;呼気弁)(図;リーク弁)。呼気弁を使用していても呼気弁は吸気圧で閉じられているので、患者回路内の余剰圧はメカニカルな原理で呼気弁からリリーフされる。
 
2)ガス流量計測
 吸気側はR2前後の圧較差を測定すること流量測定する差圧式である。呼気側にはフローセンサーはない。リークバルブを使用時には呼気ガス流量を推定して表示できるが、呼気弁使用時には呼気ガス流量は計測できない。
3)ニューマティック回路(図;ニューマティック回路図
 大気ガスはフィルターF1、ラビリンスL1、ブロアーBL1、ラビリンスL2を経由して吸気ガスになる。ラビリンスには消音効果と容量効果による酸素濃度の安定化の目的がある。吸気ガスはフィルターF3逆流防止弁CV1を経て、抵抗R2の両端の圧を計測して吸気ガス流量を測定する。吸気ガス流量の測定値に基づいてブロアーの回転数を調節する。V1はマニュアル設定の弁で、呼気弁を使用するかリーク弁を使用するかによって機器背側で切り替える弁である。この弁によって呼気弁駆動ガスを出すかCV1をバイパスするかが決定される。呼気弁を使用する際にはDの回路になり、リーク弁を使用する際にはFの回路になる。CV4は呼気弁であり、R1はリーク弁のリーク抵抗値を示す。CV2は機器停止時の緊急呼吸弁で、-3mbarになると開いて患者が大気を吸気できる。CV3は安全弁で66mbar以上の高圧を大気に解放する弁である。
 高圧酸素源はMより低圧酸素源はNより入る。V5は酸素濃度調節用の比例制御弁でR4前後の圧勾配からDPS3で酸素流量を計測してV5の開閉によって酸素濃度を調節する。高圧酸素源の場合はパネルで酸素濃度を設定できるが、低圧酸素源では低圧酸素流量と分時換気量からおよその吸入酸素濃度が決まる。V6とV7はDPS3のゼロ点校正弁である。V2はPS1とDPS1のゼロ点校正弁である。V3はPS2とDPS1のゼロ点校正弁である。
4)トリガー方式
 圧・フロートリガー方式で、感度はNormalで圧0.6-1mbar・フロー7〜11LPM 、Sensitiveで圧0.6-1mbar・フロー4〜8LPMの範囲で設定できる。PSVでのターミネーションはNormalで30%PIF、Sensitiveで50%PIFである。リーク補正機能がある。
5)呼吸モード
 (1)VC-SIMV
 V500 と同じ。AutoFlowは常にONになっている。
 (2)VC-AC
 V500と同じ。AutoFlowは常にONになっている。
 (3)PC-SIMV
 V500と同じ。
 (4)PC-AC
 V500同じ。
 (5)SPN-CPAP/PS
 V500 と同じ。
6)付加機能
(1)無呼吸バックアップ換気
 V500 と同じ。
(2)Ramp
 Drager社では吸気の立ち上げ速度をRampという。立ち上がり時間を0.1-2.0秒で設定する「時間設定」と自動的に患者の平均吸気時間の70%値を使って圧が立ち上がる「自動設定」を選択できる。
(3)AutoAdapt
 他社ではRampと呼ばれている機能はDrager 社ではAutoAdaptと呼ばれる。Tadptで設定した時間をかけて直線的にPEEPadptがPEEP圧に、PSadptがPS圧に徐々に上昇していく機能である。AutoAdaptでは患者が順応しやすいように圧レベルがゆっくり上昇する。
(4)Anti Air Shower
 回路はずれが検出されると、不必要な高流量ガスの流出を防ぐ機能である。この機能が作動中は気道内圧低下アラームはチューブ換気で0-60秒、NIV換気で0-120秒の範囲で作動を遅延できる。遅延時間はTdisconで設定する。
(5)SyncPlus
 SyncPlusは以下の3機能から成り立つ。
 @Multi-sense triggerとは圧・フロー・フロー勾配(フロー変化率)によってトリガーする。いわば複合条件トリガーである AAutomatic leak compensationとはリークバルブ使用時に有効となる。マスクよりのリーク量を計測して、リーク量に応じてトリガーの基準点を自動的に補正する機能である。BCycle learning technologyとは、平均的な自発呼吸のサイクルパターン(吸気呼気の時間)を学習し、それに基づいて、既知の先行換気での最高トリガー感度を決定する機能である。この機能によって次の換気に対して最適なトリガー感度を適応できることになる。
4.操作(図;画面構成
 基本はDrager社の人工呼吸器に共通の操作体系である。タッチパネルで選択し、ロータリーノブで(必要なら数値選択し)確定する操作体系になっている。インターフェースは直感的に理解しやすい構成になっているので予備知識がなくても簡単に操作できる。換気作動中のメイン画面では、画面表示は上から順にABCDEFの5区域にフィールドが別れている。Aにアラーム状況が表示される。Bには電源の状況や設定が表示されている。Cには圧とフローのグラフィックが表示される。Dは実測値。Eには設定値が上限に達した際などの情報画面。Fにはファンクションや設定が表示される。低圧酸素源を利用時の酸素濃度は図に示したとおりである。(図;リークバルブでの酸素濃度呼気弁での酸素濃度
5.モニター、アラーム機能
 呼気分時換気量はリークバルブ付き患者回路を選択した時にだけ計測できる。呼気弁付き患者回路では吸気分時換気量しか計測できない。アラームは高優先度(警告)、中優先度(注意)、低優先度(注記)の3段階がある。
6.ディスプレー機能(図;画面構成)
 図に示した程度の機能である。
7.患者回路構成、加湿器(図;患者回路リークバルブ付き患者回路呼気弁付き
 図に示したとおりである。
8.日常のメンテナンス
 インレットフィルタは6ヶ月毎に交換。内部バッテリは3年ごとに交換。内部装置は3年ごとに専門技術者により点検。
9.定期点検
 1年に1回、技術サービスによって作動点検、保守をする
10.今後の課題
 Drager製品の愛好家には良い選択かもしれないが、思い入れのないユーザーにとって価格を含めてPhilips社製品を凌駕する機能はあるのだろうか?