BiPAP Synchrony
1.特徴(図;BiPAP Synchronyの外観写真)
 BiPAP Synchioronyは、自発呼吸がある患者30Kg以上の体重の患者を対象とする人工呼吸器である。Synchronyには、AVAPSモードという(疑似)ボリューム換気モードが搭載されているのが、他のBiPAPシリーズとのと大きな違いである。交直両用の電源が利用できるので、病院や在宅で使用できる。従来のBiPAPシリーズは精巧なアナログコンピューターで制御されていたが、Synchronyはデジタルコンピューター制御に変貌した。そのおかげでPCやAVAPSモードなどが追加され、アラーム機能もより充実した。モデムインターフェースも装備された。在宅ではモデムを介してデーターをアップロードできる。ただ、高機能とひきかえに操作が複雑になった。
2.性能
 モード...............................CPAP、S、S/T、PC、Timed Mode
            +AVAPS
 一回換気量.......................200-1,500m
 吸気ガス流量...................〜 LPM
 呼吸回数............................0〜30BPM
 吸気時間............................0.5〜3.0 sec.
 EPAP...................................4〜15pH2O
 IPAP....................................4〜30pH2O
 重量....................................2.7 Kg
 消費電力............................AC100-240v 1.25A max., DC12v 5.5A max.
 バッテリー作動時間........内蔵していない
3.機構の概略
 ニューマティックはBiPAP S/Tとほとんど同じである。制御系はフルデジタル制御になった。ボリュームトリガー方式でトリガー感度は6 mlである。Shape SignalやAuto-Trak Sensitivity、Spontaneous Expiratory Threshold、リーク補正などの制御は基本的に他のBiPAP機器と同じである。
4.操作(図;BiPAP Synchronyの操作パネル)
1)基本
 すべての操作はアップキー、ダウンキー、エンターキーそしてRAMPボタンの4つキーで行う。アップもしくはダウンキーを押すとバックライトがONになり画面表示が点灯する。この状態で操作可能になる。ダウンキーを何回か押してSETUP画面を表示させ、画面表示を見ながら設定したい項目にカーソルを移動し、ここからパラメーター、アラーム、モード、オプション、の中から変更したい項目にを選択してエンターで確定し、アップダウンキーで必要な項目や数値を入力し、エンターで確定する。これらの操作はパソコンのバイオス画面の設定と同様の操作方法である。
2)アクセスレベル
 アクセスレベルはFULL ACCESSとLockoutの2種類がある。前者の状態の時は医療従事者向けで、設定や機能を自由に操作できる状態である。一方、FULL ACCESS状態のときに画面設定でLockoutをYESにするとLockout状態になる。この状態は患者用で、設定を勝手に変更できないようになっていて、患者はRise Timeのみ調整可能である。ちなみにLockout状態からFULL ACCESS状態に復帰するには、RAMPボタンとエンターキーを同時に1秒以上押さえる。そうするとSETUP画面に入れる。
3)AVAPS
 AVAPSをONにするとIPAP圧が設定換気量になるように自動的に調節してくれる機能で、他社でいうところのVSやPRVCに該当する機能である
4)RAMP
 RAMPの働きはBiPAP S/Tと同じである
5)Rise Time
 これを調節するとEPAPからIPAPへ圧が変化する速度を変えれる。相対的な数値で表示されている。1-6の範囲で設定できる。
6)患者回路(図;BiPAP Synchronyの患者回路
 図に示した。
5.モニター、アラーム
 無呼吸、高圧、低圧、低プレッシャーサポート、低分時換気量、低一回換気量、電力消失、患者回路のはずれ、のアラームが装備されている。
6.メンテナンス図;BiPAP Synchronyの裏面パネル
 定期的に機能チェックを行う。また、フィルターの点検、交換を行う。定期的に保守点検をする。
7.欠点
1)デジタル制御になり多機能になったが、操作のインターフェースが貧弱である。操作は小さな液晶パネルを見ながらアップダウンキーとエンターキーを何回も押しながら設定するので、目的の項目にアクセスするだけでも何回もキーを押す煩わしさがある。メニュー項目を覚えていないと余計に無駄な操作が必要になるのでなおさらである。
2)Lockout状態からの解除が単純なキーの組み合わせなので(市販のデジタル時計の設定などはこれに類似の方法であることから、解除方法が類推されやすい)、いたずらで変更されてしまう危険性があり心配である。アクセスコードとかパスワード入力の方が安心である。
3)ディスプレーのメニュー表示に日本語がない。
4)モデムによるアップロード機能は現在のADSLなどのインターネットやIP電話の時代にそぐわないので、利用しづらいケースがありうる。モデムの設定や相性、接続部の接触不良などでトラブルが起きる可能性がある。モデム自体はパソコン用に安価に市販されている部品なので、本体に標準装備すべきであろう。アップロード機能を実用にするには、LAN用のアダプターも内蔵すべきであろう。