31.オリジン医科工業株式会社
Puppy-2
1.特徴(図III-31-1)
 オリジン医科工業は小規模企業の利点を生かし、「下町の発明家」の趣の個性的な製品作りを得意とする。ある意味ではRespironics社のBiPAPにヒントを得た製品であるが、随所に独自の工夫を認める。最大吸気ガス流量が少なく、トリガー機構がないので、成人用としては適応疾患が限定されるが、小型軽量で内蔵バッテリー駆動が可能なので、小児用として充分な性能を有する。
 
2.性能
 モード...............................IMV(Pressure Relief, Volume Control)
 一回換気量.......................約166ml〜1500ml(吸気時間を実用的な0.5〜1.5sec.として
                     吸気ガス流量の範囲より計算すると)
 吸気ガス流量...................20〜60 LPM
 連続流............................... 4〜10LPM
 呼吸回数............................0〜40BPM
 吸気時間............................0.1〜3.0 sec.
 PEEP/CPAP........................0〜20pH2O
 酸素濃度............................21〜90 % (オプション)
 重量....................................約7 Kg
 消費電力............................AC100v 65VA, DC 24v 40VA
 バッテリー作動時間........内部 約40分
            外部 PC3100 約3〜4時間                               PC6100 約6〜8時間
3.機構の概略(図III-31-2)
 コンプレッサー(メーカーはコンプレッサーとブロアーの中間と表現している)で加圧したガスを、設定した時間、患者に送気する方式の人工呼吸器である。BiPAPなどの機器との違いは、最大吸気ガス流量、余剰ガスの逃がし方、制御機構の相違にある。Puppy-2の最大流量は少ないため、成人用としては万全とは言い難いが、その分だけ消費電力が少なく移動用として最適である。また、T-バードとは異なり、吸気・呼気でタービンの回転数が変化しない。コンプレッサーの回転数とガス出力流量には一定の相関関係があるので、吸気ガス流量の設定値に応じてコンプレッサーの回転数を調整している。吸気時にはコンプレッサーの出力が(圧リリーフしていなければ、すべてが)患者の吸気になる。呼気時にはコンプレッサーの出力ガスの大部分は吸入側に戻される。このバイパス回路は酸素の消費量の低減が目的で、消費電力の低減にはあまり貢献していないとのことである。吸気圧の設定つまみは圧リリーフ弁を調節していて、圧リリーフ式のPCVを提供する。もし吸気圧の設定を充分高くして、圧リリーフが起こらなければ、従量式の換気になる。呼気時には、コンプレッサーの出力ガスはバイパス弁と呼気弁にそれぞれの抵抗値に反比例して分流される。つまり呼気弁に分流されるガスが患者回路に流れる連続流(ベース流)になる。したがって連続流は吸気ガス流量の設定値により自動的に決定される。患者の吸気努力が連続流を上回ると、患者回路側の抵抗が見かけ上低下するので、コンプレッサーの出力は抵抗差に応じて配分量が変化し、最大時には患者にすべての量が分流される。つまり設定吸気ガス流量を最大ディマンド流と見なすことができる。
 オプションで酸素を添加することができる。これはジェットヴェンチュリ効果によって酸素を希釈するもので、Puritanネブライザーの酸素濃度調整機構のそれと同じ原理である。
 吸気・呼気の切り替えは、3way solenoid(電磁弁)でおこなわれるが、制御回路にはHD64180R1CP8X(日立)の8bitのCPUが使用されている。
 
4.操作(図III-31-3)
 吸気流量(LPM)と吸気時間(秒)の積が一回換気量になる。パネルに表示されている単位が違うので、計算にはLPM(Litter/min.)を60で割ってLPS(Litter/sec.)に変換する必要がある。ボリューム換気の場合は、吸気圧の設定を圧リリーフしない最低の値に設定する。圧リリーフ換気をする場合には、一回換気量は設定量にならないので、スパイロメーターで実測しながら、吸気圧を設定するのが実際的である。PEEP/CPAPはマノメーターを見ながらつまみで設定する。CPAPの場合には呼吸回数を0に設定する。オプションの酸素濃度調整機構を装備した場合、酸素濃度は希望値に目盛りであわせる。実測分時換気量に応じて必要な酸素流量を調節する。
 
5.モニター、アラーム
 マノメーターによって気道内圧のモニターができる。背面パネルにある高気道内圧設定ダイアルにより高圧アラームを、パネルにある気道圧低下アラームの設定により低吸気圧を警報できる。これらの設定は圧の絶対値ではなく、設定吸気圧に対する+/-値である点に注意が必要である。
6.メンテナンス
 定期的に機能チェックを行う。3ヶ月ごとに内蔵電池を充電する。定期的に保守点検をする。
7.欠点
 トリガー機構がないので、自発呼吸がある程度しっかりしている患者には使いづらい。
 
 
図III-31-1     Puppy 2外観
図III-31-2     Puppy 2構造
図III-31-3     Puppy 2操作パネル