23.Bear Medical Systems,Inc.
BEAR 33 Volume Ventilator
1.特徴(図III-23-1)
 米国Bear社製のピストン駆動方式の搬送用、在宅用の人工呼吸器で、手荒い取り扱いに耐えるように堅牢な構造を有する。内蔵バッテリーで約1時間作動可能である。一般的に移動用の人工呼吸器は病棟用と異なる代理店で扱うことが多いが、BEAR 33もIMIでなく、コーケンメディカルが販売する。PEEPはオプションのPEEPバルブで付加する。酸素濃度もオプションの酸素アキュムレーターを装備すれば調節できるが、実際の濃度は分時換気量により変動する。
2.性能
 モード...............................Assist/Control, SIMV +PEEP , +SIGH
 一回換気量.......................100〜2200ml
 吸気ガス流量....................20〜120 LPM
 呼吸回数............................2〜40BPM
 バッテリー作動時間........内部バッテリーで約1時間
 重量.....................................14.5 Kg
 消費電力.............................DC 12V or AC 80〜110V
                                      
3.機構の概略(図III-23-2)
 吸気ガスはピストンの動きで発生する。ピストンはMPUの制御下にある電気モーターで駆動される。吸気ガスは呼気弁を閉じるガス源にもなっている。SIGH時には設定1回換気量の1.5倍量を送気する。SIGH換気量が2200mlまでならピストンの1ストロークで送気できるが、それ以上の場合には1回目に2200ml、2回目に残量を送気する。2回目のストロークの前に、ピストン吸引相が入るが、この時に呼気弁が解放されてしまうのを防ぐために、SIGH SOLENOID VALVEが作動して、呼気弁駆動ガスの開放を阻止する。気道内圧は圧トランスデューサーで絶えずモニターされているが、アラームレベルを超えるとPRESSURE LIMIT SOLENOID VALVEが作動し、呼気弁駆動圧を大気に解放して、呼気弁を開く。過剰圧リリーフ弁(OVER PRESSURE RELIEF VALVE)は85pH2Oを超える場合に吸気圧を逃がす働きをする。
4.操作(図III-23-3)
1)ロックの解除
 設定を変更するにはパネルロックを解除しなければ操作できない。以降は、いづれかの設定用のボタンを押した時点より15秒間はパネルロックの解除が継続する。つまり何らかの操作を15秒以上あけることなく連続的にしていればパネルロックは解除されたままになるが、何も操作しなければ15秒後には自動的にロック状態に戻る。
2)設定
 電源ONにした後、ロックを解除して、呼吸モード、一回換気量、吸気ガス流量、換気回数、トリガー感度を設定する。数値は項目ごとのボタンと△▽キーを同時に押して希望の数値を入力する。I:E比が1以下になる設定や、吸気時間が0.75〜4.99秒(CONTROLモード時には0.25〜4.99秒)を外れるような設定をすると、操作中の数値表示と吸気時間の表示が点滅して設定値を受け付けてくれない。次に高圧、低圧アラームを設定する。SIGH選択時には150%の換気量で6回/時間おこなわれる。吸気時間も150%になる。高圧アラームレベルも150%値になる。電源をOFFにするには、まずパネルロックを解除してからおこなう。酸素を添加する場合には、酸素濃度計によって実測しながら、酸素流量を調節する。
3)電源
 AC電源、外部バッテリ、内部バッテリーの順で利用される。内部バッテリーはバックアップ用の電源なので、すぐ別の電源を用意する。また、内部バッテリー作動中は必ず監視下になければならない。
5.モニター、アラーム
 吸気時間は一回換気量と吸気ガス流量の設定値により自動的に演算して表示してくれる。換気情報に関して実測値の表示機能はない。患者回路内圧の監視により、高圧と低圧のアラームが作動する。無呼吸アラームは20秒に固定されている。他にも、バッテリー低電圧、機器作動不良、等のアラームがある。
6.メンテナンス
1)患者回路や呼気弁マニフォールドは適時点検し、また、最低限週2回、洗浄滅菌すること。バクテリアフィルターは抵抗が規定値を超える場合や、最低限度として年に1回は交換する。ガスインレットフィルターは汚れているとき、もしくは500時間毎に清掃する。
2)機器の作動テストは日常的におこなう。月に1回はOVPと呼ばれる点検をおこなう。7,000時間もしくは1年ごとに予防メンテナンスを受ける。20,000時間毎にオーバーホールを受ける。
 
 
図III-23-1        BEAR-33の外観
図III-23-2        BEAR-33の構造
図III-23-3        BEAR-33の操作パネル
図III-23-3        BEAR-33の患者回路