eVent Medical
Inspiration 7i ventilator
1950年代、アメリカのカルフォルニア州にいくつかの優れた人工呼吸器メーカーが誕生していた。それらはその後に利潤追求の嵐のなかで巨大資本に飲み込まれていって、マネーゲームに明け暮れて製造業としては衰退していった。現在のアメリカ製造業には、このような負の歴史が存在する。2000年3月にそのなかの意欲的なエンジニアや呼吸療法士などが最高の人工呼吸器を作りたいという熱意の基に結束してできたのがeVentという小さな会社である。主力メンバーにはNew Port Medical社とかViasys社とかBird社、Bear社など、アメリカ製品が最も輝いていた時代の人工呼吸器メーカーの開発責任者が多い。eVent社の製品にはeVolution、 LS、5i、7i、などのラインアップがある。7iはそのなかでも最新かつ最高峰に位置づけられる人工呼吸器であり、高性能PSOL吸気バルブとactive呼気弁駆動、新生児〜成人対応、NIV対応、ATC、Heliox対応、CO2モニターなど最高性能を誇る。それぞれにはコンプレッサー(タービン)内蔵モデルがある。2013年度の時点では国内未発売のため、詳細な情報はないが、少なくともBEARやBird、NMI、Viasysを超える性能でなければeVent社誕生の必然性がないので、おそらくはeVent社はアメリカ製高性能人工呼吸器メーカーの正当な継承者であろう。他のアメリカ製の主要メーカーは未だにモデルチェンジをできていないなかで、次々とラインアップが開発されているのは実力と評価の証である。
2.性能
モード............................V-CMV,V-SIMV
P-CMV,P-SIMV
SIMV(VC,PC)
PRVC-CMV,PRVC-SIMV,VS
SPAP(Dual Level PEEP)
nCPAP,nCPAP+
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NIV
Backup Apnea Ventilation
ATC
ETCO2・VCO2モニター
Automatic Leak Compensation
一回換気量.......................2-2000 mL
吸気ガス流量...................1-120 LPM
最大吸気ガス流量...........180 LPM
トリガー感度 0.1-25LPM
呼吸回数...........................1-150 BPM
バッテリー作動 120分以上
Base Flow 2.0-25LPM(NIV OFF)
2.0-60LPM(NIV ON)
Inspiron7iの技術情報についてはまったく詳細不明ではある。eVentの過去のモデルの構成と主要設計エンジニアの略歴と性能スペックより、基本的に標準的なアメリカ製の人工呼吸器が採用している構成が用いられていると予想できる。参考までにF7300000-xxシリーズのニューマティック回路図を供覧する。
酸素/Airは逆流防止弁CV1,CV2 を経て流量制御弁SOL1,SOL2で酸素濃度の調節を行い、リザーバーを充填する。FS1で抵抗を作り差圧センサーDP1で圧較差を計測してリザーバーに流入する混合ガスの流量を計測する。混合ガスは1Lの容積のリザーバーRE9で貯えられて、ピーク流量に備える。リザーバー内圧はP1で測定される。TOPはリザーバー内圧が1.8bar以上になると安全のため圧を解放する弁である。酸素濃度はOSで計測する。吸気バルブPV1で吸気ガス流量制御を行いFS2とDP2で吸気ガス流量測定を行う。吸気ガス圧はP2で計測する。回路内圧が 以上になればCOPでリリーフする。機器停止時にはSVを押しとどめている電磁弁の駆動がなくなり、陰圧になれば患者は大気ガスを吸うことが可能になる。ここの構造には逆流防止機構があるので、ここから患者回路内圧を解放することはない。吸気ガスは加温加湿器HUMで加温と加湿が行われる。ネブライザーは電磁弁SOL4でネブライザーガスが作られてネブライザーユニットNEBに入る。PROX SENSORの差圧によりセンサーDP3で吸気・呼気ガス流量を計測する。近位気道内圧はP3で計測する。呼気ガスは呼気弁EVで調節する。PV2は呼気弁駆動系である。Air配管異常時にはコンプレッサーが自動的に起動する。
4)患者回路
Yピース部にフローセンサーを設置する。それ以外は標準的である。
4.操作
12.1インチカラー液晶による高精細タッチパネルによるGUIインターフェースを採用している。BirdやBearのように基本的なパラメータには専用の設定キーエリアが設けてあり、それに対してロータリーノブを回して数値を選択して押して確定する。その他の設定はGUIを用いてタッチパネルで選択・設定する仕様になっている。
5.モニター、アラーム
カタログより判断するとグラフィックや計測機能はBearやBirdより改良されていると思われる。
6.患者回路
標準的な患者回路である。
7.メンテナンス
不詳。
8.欠点
不詳。