Philips Respironics
V60
1.特徴(図;V60外観写真
 V60は2009年にBiPAP Visionの後継機種として発売された(図;BiPAP Visionの外観写真)。ちなみにBiPAP Visionは1997年に発売されたBiPAP機の(当時としては)最高機種であり、Visionの名のとおりに大画面液晶表示が特徴であった。3波形(フロー、ボリューム、圧)のグラフィック表示や各種の情報、機器設定情報、を表示できた。さらに最大フローや圧も強化され、酸素濃度設定やアラーム機能も内蔵された。PAV(Proportional Assist Ventilation)モードも搭載されていた。当然、V60にもこれらの機能は引き継がれている。
2.性能
 モード.............CPAP,S/T,PCV,AVAPS,PPV(PAVと同じ)
 最大流量240 LPM
 吸気圧.....4-40pH2O
 PEEP........4-25pH2O
 呼吸回数...4-60BPM
 rise time......0.05-0.4sec
 ディスプレー.....3波形同時表示、データー表示
 
3.機構の概略(図;V60のニューマティック回路)
1)構造
 外気より導入した空気はブロアーにより加圧される。IPAP圧に応じてブロアーの回転数は変化する。エア流量と酸素流量は熱線式のフローセンサーで計測する。高圧配管よりの酸素ガスは比例制御弁で流量調節されてO2フローセンサーで流量を計測して酸素濃度を規定している。リークバルブ(リークポート)からのリーク量は気道内圧と既知の相関関係があるので、気道内圧情報があれば、リークバルブからのリーク流量を推定することができる。V60が送る総流量から推定リーク量が患者の吸気・呼気ガス流量とみなせる。リークにはマスクからのリークも存在するが、呼気終末時には患者の吸気・呼気が存在しない時相がある。この時相でのリーク量はマスクからのリークとリークバルブのリーク量の合計である。リークバルブからのリーク量は気道内圧から推定できるので、マスクからのリーク量も推定できることになる。つまりマスクからのリーク量もリークバルブでの推定と同じ手法が応用できる。SOL2とSOL3はMachine Pressure Sensorのゼロ点校正弁とProximal Pressure Sensorのゼロ点校正弁である。SOL4はProximal Pressure Sensorの入力をProximal PressureかMachine Pressureかを切り替える弁である。Proximal Pressureを測定する事は正確なリークバルブからのリーク量を推定するのに必要不可欠である。
2)トリガー機構
 Tirlogyで解説した。Auto-TrakSensitivityと命名された機能である。マニュアルで感度を調整する必要はない。詳細はTrilogyでの説明を参照。
4.操作(図;V60の操作パネル)
1)一般操作
 ディスプレーに対応したファンクションキー設けてあり、メニューに応じてキーを押して選択する。数値はつまみ入力し、プッシュで確定する。
2)設定
 電源を入れると最後に使用した設定で起動する。必要があれば画面下のタブを使用して必要な設定に変更する。マスクの種類と呼気ポートの選択は重要なので必ず確認する。DEPとWhisper Swivelを選択した際には呼気ポートのテストは不要であるが、その他の呼気ポートを選択した際には呼気ポートのリーク量を計測するためにテストシーケンスが必要になる。
3)その他、PPVでの設定(図;PPV設定の推奨プロトコール
 PPVモードは一般的にPAV(Proportional Assist Ventilation)と呼ばれるモードである。設定項目として、EPAP(PEEP),FiO2,PPV% (PAVでのアシスト量),Max E(最大Volume Gain),Max R(最大Flow Gain),Max V(最大吸気量),Max P(最大吸気圧)がある。吸気量がMax Vに達すると吸気は強制終了する。吸気圧がMax Pに達した際には圧力の上昇は止まるが吸気は終了しない。3回連続してMax Pに達するとアラームが警報する。設定のしかたはフローチャートに示した手順が推奨されている。実際のフローゲインはMax R×PPV%になる。実際のボリュームゲインはMax E×PPV%になる。
5.呼吸回路(図;患者回路
 鼻マスク回路(non invasive)と気管挿管用回路(invasive)が利用できる。患者回路には必ずバクテリアフィルターを装着する。
6.モニター、アラーム機能
1)モニター(図;画面表示
 フロー、ボリューム、圧の3波形をグラフィック表示できる。換気量や換気回数、リーク量など、設定値や実測値を数値表示できる。バーグラフ表示もできる。 
以下のの項目がある。気道内圧上限、気道内圧下限、無呼吸、低分時換気量、呼吸回数上限、呼吸回数下限、内部バッテリー電圧低下、機器不良、圧ラインはずれ、圧制御不良、酸素供給不良。
7.メンテナンス
 背面パネルフィルター、酸素モジュールフィルターは適宜点検、交換する。毎月、冷却ファンフィルターを点検し、必要があれば線上する。6ヶ月毎に吸気フィルターを点検、必要があれば交換する。1年ごとにバッテリー点検し、必要があれば交換する。また定期点検を受ける。
8.今後の課題
  V60は仕様として呼気弁付き回路を利用できないが、呼気弁を備えればより適応が拡大できる。