Covidien
Puritan Bennett 560
1.特徴(図;Puritan Bennett 560の外観写真)
 Puritan Bennett 560は体重5Kg以上の患者を対象とした在宅用や長期療養用の人工呼吸器である。間欠的〜連続的、病棟〜在宅での使用を対象とし、NIV(低侵襲呼吸療法)や侵襲的人工呼吸療法にも対応する。小型軽量ながら使いやすいUSBインターフェースと多彩な換気モード、吸気・呼気に内蔵されたフロートランスデューサーによる高精度の流量制御が特徴である。内蔵リチウムイオンバッテリーは最大11時間作動できるので移動用としても利用できる。交直両用の電源対応。定価250万円。
2.性能
 モード..........V A/C,
       P A/C,
       V SIMV
       P SIMV
       CPAP
       PSV/ST
       +Target Volume(圧換気モードのみ、PRVC/AutoFlowと同じ機能)
 
 1回換気量 50-2000mL
 最大吸気ガス流量..240LPM
 呼吸回数.......1-55BPM
 吸気時間........0.3-2.4秒
 Pi.....................5-55cmH2O
 立ち上げ時間 200、400、600、800mS
 バッテリー作動...約9-11時間
 重量...............4.5 Kg
消費電力......... AC100-240V 180W, DC12-30V 8.3A、
 
3.機構の概略
Puritan Bennett560の構造(図;Puritan Bennett 560のニューマティック
 単純に表現すれば、BiPAP機であるKnight Starに呼気弁駆動回路や呼気フローセンサーを組み込んで多機能人工呼吸器にしたのがPuritan Bennett560である。医療ガス配管設備のない場所で使用できるよう、ルームエアーを吸入して圧縮するためのタービン(最高回転数5万回転240LPMの供給能力がある)を内蔵している。患者接続ポート付近の圧は吸気回路圧センサで、流量は吸気フローセンサで常時監視されており、各換気モードの各動作相において必要な圧又は流量が生成されるようタービンは制御される。
 ルームエアーは徐塵フィルタを介してタービンブロックに吸気され目的の圧又は流量が得られるようタービンで圧縮される。吸気フローセンサは層流フローの2点間の圧差を測定する差圧方式であるため、層流フロースタビライザを用いて安定した層流を生成する。層流フロースタビライザを経た吸気ガスは患者接続ポートから患者回路チューブにより患者へ供給される。
 呼気弁は呼気電磁弁によって制御される。タービンからのガス流を分枝して、呼気電磁弁(比例制御弁)で呼気弁駆動ガスを調節している(図;NIV呼気電磁弁の詳細)。呼気弁駆動ガス圧は呼気バルブトランスデューサーによる信号を用いて比例制御(サーボ制御)されている。呼気弁駆動ガス圧は、吸気サイクルの間は呼気弁は完全に閉じる。吸気ガスは患者の気道内に供給される。呼気相に転ずると、呼気弁駆動ガスは呼気電磁弁から大気に解放され、PEEP圧を維持するように調節される。呼気弁は部分的に開いた状態になり患者の呼気ガスが呼気弁を介して大気に開放される。
 
4.操作(図;PB560の操作パネル)
本体の後方部のメインスイッチをONにするとHELLOメニュー画面が表示される(図;Hello画面。その後、スタンバイ状態になり、前回停止時の設定が画面に表示される。画面表示は3つのメニュー画面で構成されている。換気メニューとアラームメニュー、波形ディスプレー(選択可)である。画面の切替はメニューキーで移動すると次の画面になる。設定を変更したい項目までカーソルを移動し、実行キーで項目を確定し、その後アップ・ダウンキーで必要なモードや数値を入力し、確定する。正面パネルの換気オン/オフボタンを押すと換気がスタートする。スタートキーは全画面で有効で、このキーを押すと直ちに換気がスタートする。パネルロックはアップ・ダウンキーの両方を同時に6秒以上押し続けると作動する。ロック状態ではパラメーターの変更はできなくなる。解除も6秒以上押し続ける操作で行う。換気を停止する際には、換気オン/オフボタンを を3秒以上長押し、確認用と表示されたら、換気オン/オフボタンをもう一度押す。
1)モード
(1)PSV ST
 このモードはNIVでのS/Tモード、人工呼吸器ではPSVと呼ばれるモードである。患者の吸気開始による吸気フローの増加を検知し、吸気タイミングに合わせて吸気圧を設定したレベルに上げて吸気を補助する換気モードである。設定した圧レベルに達する速度は1〜4の4段階に設定することができる。吸気終了に向けて吸気流量が減少していく際に吸気流量が設定レベルを下回った時、吸気サイクルを終了して呼気サイクルへと移行する。無呼吸検出時に予め設定した回数で強制換気を実行する。
(2)P A/C
吸気サイクルの吸気圧が予め設定した値を超えないように制御する従圧式の換気モードである。設定した圧レベルに達するのに要する時間、立ち上り時間は予め設定することができる。換気回数は予め設定する。患者の吸気開始努力を検知し、吸気タイミングに同期して換気を開始する。
(3)V A/C
吸気サイクルの一回換気量が予め設定した値を超えないように制御する従量式の換気モードである。付随的に発生する不要な気道圧のピーク圧を抑えるために、一吸気サイクル中の流量変化を異なるパターン(正弦波、漸減波、サインウェーブ)に設定することができる。換気回数は予め設定する。患者の吸気開始努力を検知し、吸気タイミングに同期して換気を開始する。
(4)P SIMV
P A/C による強制吸気サイクル以外では患者はいつでもPSV の自発呼吸ができる換気モードであり、最低レベルの従圧式強制換気を保障したうえでの自発呼吸換気モードである。
(5)P SIMV
V A/C による強制吸気サイクル以外では患者はいつでもPSV の自発呼吸ができる換気モードであり、最低レベルの従量式強制換気を保障したうえでの自発呼吸換気モードである。
(6)CPAP
気道圧を一定の陽圧に維持する換気モードである。気道圧を患者気道圧センサで監視しながらタービン出力を調節して気道圧を一定に保つ。
 
2)吸気トリガ
 吸気Sens により、機械呼吸の開始するために患者に必要なトリガーレベルを設定できる。Sens1(P)が最高感度でSens5は最低感度になる。
レベルは、ベースフローと比較したフローに対応しています。
吸気Sens 1(P)= ベースフロー +(0.4 lpm から 1 lpm)(P = 小児用)
吸気Sens 2 = ベースフロー +(0.7 lpm から 1.3 lpm)
吸気Sens 3 = ベースフロー +(0.9 lpm から 1.5 lpm)
吸気Sens 4 = ベースフロー +(1.0 lpm から 1.6 lpm)
吸気Sens 5 = ベースフロー +(1.2 lpm から 1.8 lpm)
 
3)Rise Time
 Rise Timeは圧換気において吸気圧が立ち上がる時間を調節する機能である。これもレベル1~4まである。数値は相対的なもので必ずしも設定値どおりにはならない。
立ち上がり時間 = 200 ms
立ち上がり時間 = 400 ms
立ち上がり時間 = 600 ms
立ち上がり時間 = 800 ms
 
4)呼気トリガ
 これは一般的にフローターミネーションと呼ばれる機能で、ピーク流量に対する割合で表示される。5-95%の範囲で設定可能。標準は25%。Trigg Eは設定吸気圧もしくはRise Timeによって規定される最少吸気時間が経過した後に有効となる。さらに吸気時間は最大3秒、先行換気の呼吸サイクル時間の50%値までに制限されている。
 
5)Back up数
 無呼吸が継続した際に行われるバックアップ換気回数を設定する機能である。OFFにもできる。無呼吸時間Apnea Timeを設定することもできる。30秒/BUR~180秒/BURの範囲で選択できる。デフォルトはAutoで60秒/BURである。
 
6)Target Vt
 PSVやPCVなどの圧換気モードでは目標一回換気量を設定できる。この機能によりそれぞれVSやPRVCモードに変化する。最大吸気圧maxiを設定する必要がある。
 
7)Ramp
量換気モードでの吸気流量パターンを意味する。Rは漸増波で、Dは漸減波である。SQは矩形波である。
8)SIGH
 ONにするとSIGH VOLUMEとSIGH RATEを設定できる。
9)USBメモリー
 動作状況をUSBメモリーに保存できる。(図;USBメモリー管理画面
 
5.モニター、アラーム
 気道内圧はバーグラフ表示される(図;波形表示画面)。吸気・呼気一回換気量、換気回数、FiO2の実測値をモニターして数値表示する。これらの項目は上限・下限をアラームで監視されている。その他、機器作動異常に対してエラーメッセージが表示され、高優先度な状況では連続音が鳴り赤いLEDが点滅しディスプレーにもアラームメッセージが表示される。中優先度アラームの際は、メッセージ表示だけのこともある。バッテリー残量も表示できる。
6.患者回路
 シングルブランチ(図;シングルブランチ回路)とダブルリム回路(図;ダブルブランチ回路)が利用できる。シングルブランチの場合は呼気(VTE)のフロー測定ができない。NIVで利用する際にはポート付きマスクもしくはポートディバイスを装着したポートなしマスクを使用する。
7.メンテナンス
エアインレットコンビフィルタは1ヵ月に1度以上交換する。1年、若しくは15000時間毎に定期点検を受ける
8.今後の課題
 呼気弁を使用する場合は患者回路が複雑になる。また、呼気ガス流量を計測できない。これは呼気弁を本体に内蔵して、呼気フローセンサーを内蔵すれば解決することである。