あとがき
 
 ありがたいことに、今回で4回目の改訂版を出すことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。本書のような医学書とかけ離れた本にも継続的な需要があることは、人工呼吸器のモードについて、概念が系統的に分類されていない現状への証左でもあり、混乱している現状の反映でもあります。人工呼吸器は工学と医学の両分野に跨る興味深い機械だと思います。人工呼吸器はとても複雑な動作をします。その動作を決定するのは人工呼吸モードですが、各社がそれぞれ勝手にモード名を命名したり、一方、同じモード名でありながら各社が独自の機能を持たせたため、人工呼吸モードの概念はまったく整理・統一されておらず、医療サイドとしてはとても理解しがたい状況になっています。本書が、こうした現状を分類して解説することの一助になれば著者としては幸いです。
 さて、今回も国内で入手可能な人工呼吸器(麻酔用以外)をすべて網羅しようと努力をしました。2008年以来、残念なことに株式会社アイカや木村医科器械は倒産し、スカイネット社やIMI社は人工呼吸器製造より撤退しました。海外の多くの老舗のメーカーも同じような状況で、M&Aにさらされて多くの企業そのものが存続の危機にありました。やはりM&Aは製造業にとってマイナスの面が多いのでしょう。逆にM&Aと縁の遠かった企業からは先進的な製品がどんどん開発されました。かつての名門からはモデルチェンジがなく、ブランド名ばかり変わってしまうのはマネーゲームの弊害でしょうか。
 2008年度版ではPAVやASV、NAVAに注目しましたが、今回の目玉はINTELLiVENT-ASVです。これはモードと言うより呼吸管理アプリケーションと言うべきものです。INTELLiVENT-ASVの出現によって、人工呼吸器はこれから新領域に入ったと言えます。しかしながら、RSTで回診をしておりますと、いまだに古典的なCMV(機械的強制換気)やSIMVから卒業できないていない時代遅れな設定や誤解に基づくおかしな設定に遭遇することも多いのも事実です。
 前編から、本とインターネットとコラボレーションを進めてきました。今後も、これらを協調的に発展していく方向性で推進したいと思います。情報の最新性ではネットが優位ですが、本にも独自の優位性があります。今後もネットと本の2本立ての柱で運用していきます。本書のために以下のURLを用意しております。ご活用頂けると幸いです。
 
http://lungventilator.com
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