NewPort Medical Instrument
HT70, HT70plus
1.特徴(図;外観写真)
 HT70は体重5kg以上を対象とした、NIV対応の省電力デュアルマイクロピストン駆動式の救急・搬送用・在宅用の人工呼吸器である。デュアルマイクロピストンが機構上の最大の特色であり、タービンやブロアー・コンプレッサーなどの他のガス圧縮技術と比べると消費電力の少なさに優れる。内蔵デュアルバッテリーにより最大10時間作動可能である。また、バックアップバッテリーだけでも30分以上稼働できる。作動中でもバッテリーを交換できる。HT70plusにはHT70にグラフィック、フロートリガー、呼気量モニター機能をもつ口元フローセンサーが追加されている。
 
2.性能
 モード.............................A/CMV(VC/PC)
           SIMV(VC/PC+PSV)
           SPONT(PSV)
           
 一回換気量.......................50-2200 mlL
 吸気ガス流量...................6-100 LPM
 最大吸気ガス流量...........100 LPM
 呼吸回数............................1-99 BPM
 吸気時間............................0.1-3 sec.
 PEEP...................................0-20 cmH2O
 トリガー感度...................-9.9-0cmH2O、もしくは0-10LPM
 重量....................................6.9 Kg(バッテリーを含む)
 消費電力............................AC100-240v max 2.0A
            DC 10-24v  max. 5A
 バッテリー作動時間........最大10時間
            
3.機構の概略(図;ニューマティック回路図)
1)デュアルマイクロピストン
 モーターにより小容量の(数ml程度の)デュアルマイクロピストンを駆動する方式が採用されている。従来のピストン方式では1回のピストンの動きで一回換気量を送気していたので、ピストン容積が大きくなり慣性質量も大きくなっていたが、HT70では小容量のデュアルピストン(往路と復路の両方のいづれの動きでも吸気ガスを発生する)を高速モーターで駆動することにより吸気ガスを発生する応答性の優れた小型の装置である。この方式ではタービンやブロアーに比べて脈流を生じる欠点はあるが、エネルギー効率の良い長所があり、結果的に消費電力が少ない。
 
 
 
2)酸素ミキサ(図;酸素ミキサ)(図;酸素ブレンダー
 オプションである空気/酸素ミキサを取り付けると、高圧酸素源を利用して、設定酸素濃度で混合ガスの供給が可能になる。酸素センサーはマフラー部に取り付けてあり、酸素供給濃度を表示する。酸素ブレンダを使用すると低圧酸素源を利用して、吸気ガスの酸素濃度を高めれる。必要酸素流量と分時換気量、吸気ガス酸素濃度の関係は図に示したとおりである(図;酸素流量と吸気酸素濃度)。
3)呼気弁
 内部ポンプの稼働により、PEEP設定に応じたガスをプロポーショナルバルブから呼気弁に供給し、ON/OFFバルブの開閉により、吸気/呼気の流れを切り替える。
4)安全機構
 電源OFF時や万が一の故障時には、吸気マニホールド部に位置するガス取り入れ口から大気を吸うことができる。また、100cmH2O以上の回路内圧は開放される。
5)バッテリー 
 パワーパックバッテリーとバックアップバッテリーの2つのリチウムイオンバッテリー(デュアルバッテリーシステム)で構成され、最大10時間の稼働できる。パワーパックバッテリーは本体背面にあり、着脱可能。本体の電源を入れたまま換気を中断させることなく、予備のパワーパックバッテリーに交換できる。パワーパックバッテリーは単独でも充電できる。バックアップバッテリーは全ての電源が停止した場合やパワーパックバッテリーが外れた状態でも最低30分間の稼働ができる。最短3時間で100%の充電が可能である
6)NIV
 NIVではベースフローが3-30LPMで設定可能。低分時換気量アラームをOFFにできる。
7)PSV/PCV
 ターミネーションは(1)ピークフローに対して設定%以下になる、(2)設定圧+3cmH2Oになる、(3)設定PS最大時間に達する、である。PCVでは設定圧+8cmH2Oになると吸気相は強制終了する。
8)バックアップ換気
 この機能は低分時換気量警報、無呼吸警報、が作動すると起動する。デフォルトでバックアップ換気のパラメータが設定されているが、アドバンス画面でユーザー設定可能である。バックアップ換気はすべてのモードで機能する。バックアップ換気中、消音/リセットボタンを押すと消音するがキャンセルされない。換気パラメータを変更する、低分時換気量が原因の場合は+10%になった時点、無呼吸が原因の場合は2分後、の条件でバックアップ換気はキャンセルされる。
(1)A/CMVとSIMVモードでのバックアップ
 バックアップ換気数の初期設定は99-15BPM間で、換気回数の1.5倍になる。ただしI:E比が1:1になる換気数までの制限がある。
(2)SPONTモードにおけるバックアップ
 初期設定は次のようになる。
15BPMのSIMV(PC)モードで、PC圧 = 設定PEEP+15cmH2O、吸気時間 = 1.0秒
4.操作
1)基本的な操作方法(図;操作パネル
 タッチパネルを触れて項目を選択し、「↑」「↓」のキーで数値を選択し、「確定キー」で確定する。
2)設定の方法(図;設定画面)(図;アドバンス画面)(図;ユーティリティ画面
 電源を入れるとセルフテスト(クイックチェック)が行われ、その後にメイン画面でパラメーターを選択・入力・確定を行う。必要があればアドバンス画面で設定を行う。次にアラーム画面でアラーム設定を行う。その後にテストラングを接続して「換気開始」のタッチキーを押す。その後に患者に接続して、トリガー感度を適切に設定する。
 
5.モニター、アラーム(図;波形画面)(図;アラーム画面
 アラームには、呼吸回数、分時換気量、圧、無呼吸、酸素濃度、電源、バッテリー状態、などがある。モニター機能には、圧・フローのグラフィック波形や、換気パラメーターの実測値、圧・フローと圧・ボリュームなどを表示する機能が備わっている。
6.患者回路図;患者回路図)(図);口元のフローセンサー)(図;呼気弁の構造
 図に示したとおり。HT70plusでは口元にフローセンサーを設置する。
7.メンテナンス
 エアインレットフィルタは1週間毎に点検、必要時に交換。近位圧モニター用のインラインフィルタは週に1回点検、少なくとも3ヶ月に1回は交換。6ヶ月毎にクイックチェック。24ヶ月毎にフィルター類の交換、バッテリーの交換、酸素センサーの交換、冷却ファンフィルタの交換、有資格エンジニアによるキャリブレーションと点検。4年もしくは15000時間以内に包括的メンテナンス。
8.今後の課題
1)患者回路が複雑で煩わしい。
2)呼気弁が必要なら本体に内蔵しても良いのでは?
3)口元フローセンサーを装着時には近位圧モニターラインは不要である。