A/C(ASSIST/CONTROL)
1.概念と目的
A/Cは純粋にモード名ではないが、最近では頻用される用語なので、ここではモードに準じて扱う。強制換気の入れ方はCMV(Contineous Mandatory Ventilation)と同じであるが、CMV(Contineous Mandatory Ventilation)は歴史的な用語であり、一般的にボリューム換気で行われるモードを意味することが多い。つまりCMV(Contineous Mandatory Ventilation)は現代的に表現すれば、A/C(VC)と表現される。一方、A/Cはすべてのトリガーに対して強制換気を与える換気モードを意味するので、強制換気の種類は問わない。一般的には、A/C(VC)、A/C(PC)、A/C(PRVC)など、強制換気の種類を併記して表現する。A/Cとだけ記載されている場合は、成人用の人工呼吸器ではA/C(VC)を意味することが多い。しかし小児用ではA/C(PC)を意味することが多い。
A/CはSIMVと対になる概念でもある。ちなみにCMV(Contineous Mandatory Ventilation)はIMVと対になる概念である。A/CとSIMVは強制換気の入れ方に対する差違を表現した概念である。SIMVも従前は自動的にボリューム換気による強制換気と思われていたが、最近ではSIMV(PC)やSIMV(PRVC)などがあり、SIMVでも強制換気の種類を併記するのが主流である。しかしながら、A/Cでの表現と同様に、SIMVとだけ記載されている場合は、成人用ではSIMV(VC)、小児用ではSIMV(PC)を意味することが多い。
2.構成要素
1)トリガーウィンドー(図;
タイマー説明図:Bennett 840ユーザーマニュアルのモード解説より抜粋。)
前回の強制換気の開始した時点より、決められた時間内(トリガーウィンドー時間)にトリガーがあればトリガーに同期して強制換気(PIM)を送る。強制換気を開始するとタイマーが再びリセットされる。トリガーがなければトリガーウィンドー時間が終了した時点で強制換気が送られる(VIM)。ちなみにトリガーウィンドー時間(Tb set)は60秒÷設定換気回数である。
2)不応期、強制呼気時間
ノイズによってトリガーを誤検出したり、呼吸中枢が不安定な場合は強制換気の刺激で自発が誘発されたりして、呼気を充分に呼出していない内にもう一度トリガーしてしまう場合がある。この際には吸気時間が2倍近くになり、患者呼吸との同調性が損なわれる。A/C(VC)では、換気量が2倍近くになり有害である。こうした状態を予防するために、トリガー検出後、一定時間はトリガーに対して反応しない期間を設けてある人工呼吸器もある。この時間を不応期、強制呼気時間と呼ぶ。
3.制御方法
メカニカル方式、ニューマティック方式、電子回路方式、マイクロプロセッサー方式がある。現在ではマイクロプロセッサ方式が主流である。
4.利点と欠点
従来の見解では、A/Cは患者の自由度が少なく、一方、SIMVは強制換気と自発呼吸を自在に適合させうる融通性のある換気モードであると評価され、後者はいかなる病態の患者に対しても第一選択とされうると考えられた。ある意味では現在はSIMV全盛期であるとも言える。しかし、SIMVには2種類の全く異なる換気が、患者にとっては無秩序に与えられる欠点があり、かなり不自然な換気モードである点は否めない。一般的にはA/Cの出番が少ないように思われがちであるが、強制換気にVCVを使う換気モードはもはや古典である。PRVCやPC、AutoFlowなどにFlow Termination調節を付加した新世代の強制換気では、患者の自由度が高く、その上で強制換気の柔軟性が高いので、強いて不自然なSIMVを併用する必然性がない。むしろ新世代の強制換気を使用したA/Cの方がスマートに患者の自発呼吸をサポートできる。