株式会社アイビジョン(Aivision)
ALV-3000
1984年創業のアイビジョン社は1987年にCLV50を開発し、1991年に株式会社アイカ社にOEM供給を開始した。1993年にはCLV70、1999年にはCLV90を販売開始したが、その直後に株式会社アイカが倒産したので、CLV90は木村医科器械株式会社によりALV-2000なる別名でも販売された(しかし2010年に木村医科器械株式会社も倒産した)。2013年に販売開始したALV3000は、必要最低限度の機能を簡単な操作で提供する普遍的なモデルである。機能が限定されている分、とてもユーザフレンドリーである。こうしたカテゴリの中で、ALV3000は国産唯一の人工呼吸器であるので奮闘を期待したい。静音コンプレッサーと停電時対応のためのバッテリーを内蔵している。
2.性能
1)利用できるモード
VCV
VIMV
PCV
PIMV
PSV
CPAP
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無呼吸バックアップ
2)基本データー
最大吸気ガス流量
強制換気.................120LPM
PSV..........................120LPM
最大換気回数...............60 BPM
トリガー感度 1-20LPM,1-10hPa
バッテリー駆動 約4時間(コンプレッサー駆動時には約1時間)
3.制御回路、制御機構の解説
人工呼吸器としては標準的な構成を採用している。すべてのガス制御はサーボバルブによって調整されている。
1)ガス流量計測
吸気ガス流量は熱線型で計測している。呼気ガス流量計測も熱線型であるが、こちらはディスポ方式である。
2)吸気バルブ
サーボ弁(比例制御弁)である。
3)呼気バルブ
シリコン膜型弁である。バルーン型と類似の形式である。駆動圧はサーボ弁で圧を作り、電磁弁でPEEP圧と閉鎖圧に切り替える。
高圧酸素と圧縮空気はレギュレーターでフィルターFL1とFL2で漉したあと、レギュレーターPR1とPR2で減圧して、それそれの流量調節弁MV1とMV2で酸素濃度と吸気ガス流量を調節する。吸気ガスの酸素濃度はOxygen Sensorで計測する。機器異常時にはSafty ValveのPLが余剰圧のリリーフを、NLが大気の吸気を可能にする。SL3とSL4はP4とP5のゼロ点校正弁である。呼気弁はSV1とSV2で決めた圧で吸気時に閉じられる。一方呼気時にはSV1とSV3で決められる圧でPEEPを調節する。SL5は酸素濃度センサーの校正弁である。SL10とSL9の作動によって、呼気弁を閉じる圧を切り替える。SL7とSL89はネブライザー駆動ガスを調節する電磁弁である。
5.制御ソフト
各機能の説明
1)トリガー方式
フロートリガーと圧トリガー方式を併用できる。
2)VCV
通常の量換気のA/Cである。不応期の設定はない。吸気ポーズは固定で0.3秒である。I:Eから設定する仕様になっている。
3)VIMV
VCVによるSIMVモードである。固定時間方式で、トリガーウィンドーはSIMVサイクル時間の終末40%に設けられている。PSVの吸気があればPSV吸気時間と同じ時間がPSV呼気時間として割り当てられるので、その間は強制換気を遷延させる処置を行っている。
4)PCV
PCVは一般的な圧換気のA/Cである。
5)PIMV
VIMVの強制換気がPCVになっただけである。
6)PSV
吸気終了認識条件は以下である。(1)吸気時間が2.5秒に達する。(2)吸気開始後0.2秒以降にピーク流量の25%以下に吸気ガス流量が低下する。(3)吸気開始後0.2秒以降に気道内圧がPSV圧+2hPa以上に上昇する。
6)無呼吸バックアップ
30秒以上無呼吸があれば、アラームが鳴りながら固定パラメーター(TV=400, RR=10, I/E=1:2)で30秒間調節呼吸が行われる。途中で自発呼吸を検出した場合、もしくは30秒間の調節呼吸の後には元のモードに復帰する。再度、30秒間の無呼吸が発生したら再び前述の動作を繰り返す。
7)ネブライザー
ONすると吸気時にのみ作動する。30分後に自動停止する。
8)バッテリーバックアップ
バッテリー駆動は約4時間可能である(コンプレッサー駆動時には約1時間)。
モードはモードキーを長押しすると選択出来る。各パラメーターはそれぞれの設定キーを押して項目を選択し、各パラメータの上下の矢印キーを使って数値設定をする。もう一度項目キーを押すか、20秒経過すると実測値の表示に戻る。
その後、気道内圧上限、下限のアラームを設定する。
7.モニター、アラーム機能
1)アラーム
気道内圧上限、下限、無呼吸のアラーム、供給圧異常、停電、バッテリー電圧低下、がある。
2)モニター
1回換気量や気道内圧、換気回数、酸素濃度などを数値表示できる。
8.ディスプレー機能
気道内圧は液晶のバーグラフで表示できる。グラフィックディスプレーはない。
F&P社MR810もしくはPMH1000加温加湿器を選択出来る。
10.日常のメンテナンス
図に示した。25回の滅菌もしくは破損があれば呼気弁ユニットを交換する。
2)吸気フィルター
25回の滅菌、もしくは2000時間経過すれば交換する。
3)酸素センサーは6ヶ月毎に交換。
11.定期点検
6ヶ月毎に定期点検を受ける。2年(5000時間)、4年(10000時間)、8年(20000時間)のオーバーホールを受ける。
12.欠点
1)グラフィックディスプレー機能がないのは残念である。
2)吸気ポーズが0.3秒固定なのは疑問であるが、簡単な操作体系を優先させたのなら仕方がない。
3)今では過去の換気モードとなりつつある古典的なVCV換気やSIMVがいまだに主役なのは残念である。
4)取扱説明書の記載に独善的な解釈があり違和感がある。例えばSIMV+PSVにおいて、先にPSV圧を下げてから最後にSIMV回数を下げて最終的にCPAPにするという内容に同調しかねる。