1.概念と目的
2.構成要素
3.制御方式(制御機構と作動理論)
4.装飾要素
何らかの原因で換気障害に陥った患者の肺を他動的に換気代行もしくは換気補助を行う装置を人工呼吸器(Ventilator)と呼ぶ。胸郭外陰圧式、気道内陽圧式、高頻度換気などがある。この本では現時点で最も実用性の高い気道内陽圧式の人工換気装置のみを扱う。
気道内陽圧式人工呼吸では、吸気は陽圧により能動的に行われるが、呼気は患者の呼吸器の弾性により受動的に排出され、これを積極的に補助しない。過去には呼気相を陰圧にする機構も存在したが、現在は呼気ガスの排出を止めるPEEP機構が設けられている。PEEPをIPPV(Intermittent Positive Pressure Ventilation)に付加するとCPPV(Contineous Positive Pressure Ventilation)と呼ぶ。未熟児用では呼吸回路抵抗を代償する意味で呼気吸引機構が設けられている事があるが、呼気相で気道内圧が陰圧になる訳ではない。したがって現在市販されている一般的な人工呼吸器はすべて気道内陽圧式である。
当初、人工呼吸は換気障害を改善する目的で始められたが、現在ではガス交換能の改善をも目指している。今後は人工肺を含めたガス交換能の維持が最終目的になるであろう。
参考)ベンチレーター?レスピレーター?
英語では、人工呼吸器はレスピレーターと呼ばず、現在はベンチレーターという用語を使用する。訳せば人工換気装置であるが、日本語では人工呼吸器のままである。私見であるが、人工呼吸器が目指すものは広義の呼吸であるので、レスピレーターで良いのかもしれない。
陽圧式人工換気装置(以降は人工呼吸器とする)は、1)吸気ガス発生装置、2)呼気制御装置、3)制御機構、4)モニター(アラーム)より構成される。
1)吸気ガス発生装置
(1)ベローズ駆動
ベローズを電気モーターや圧縮空気で駆動して吸気ガスを得る。本法は従量式の換気を得る機構(Volume Generator)として1960年代に多用された。現代でも麻酔用機や在宅療養用に使われる。しかし、ベローズを駆出する前にベローズ内に吸入する行程が必要な事、ベローズ駆動機構に物理的な慣性がある事、などから頻呼吸に追従するのは難しい。また、ベローズ容積以上の一回換気量を発生できない。
(2)断続弁
高圧のガス源を断続することで吸気ガスを得る。断続弁駆動機構の慣性質量はベローズ駆動機構のそれに比べてはるかに少ないので、より高速作動が可能である。またベローズ駆動式に見られた1回換気量の制限はない。従量式も従圧式にも対応できる。高圧ガスを制御機構に用いるニューマティック回路と併用させる事が多い。電磁弁で駆動することもある。
(3)流量制御弁
電気信号に応じて吸気弁の開く程度を調整できる弁(流量制御弁)を用いて、高圧ガスの流れを制御して吸気ガスを得る。ほとんどの呼吸モードに対応できる。現代の人工呼吸器には必須の機構である。
(4)その他
ディマンドバルブやベネットバルブ(Benette PR-1,PR-2)を用いて従圧式の換気を得る(Pressure Generator)。Pressure Support Ventilation(PSV)やPSV類似の換気を得る特殊な機構として採用される。最近では、BiPAPに代表される、マスク下に圧換気により呼吸補助をおこなう低侵襲性の換気法が注目を浴びているが、ここでは圧発生器(Pressure Generator)としてブロアーやタービンを用いている。T-Bird(Bird社)では、タービンの回転数を直接的に細かく制御して量換気や圧換気モードを作り出す手法も実用化されている。
2)呼気制御装置
呼気制御には(1)呼気の断続や(2)PEEP機能が求められる。
(1)呼気の断続
呼気断続弁の駆動はニューマティック回路を利用する事が多い。電磁弁による駆動も使われる。
(2)PEEP機能
一般的にPEEP弁はバネ圧やマグネット、空気圧、水圧を利用したもので構成される。特に、空気圧を利用したバルーン弁は呼気断続とPEEP機能を兼ね備えるので、永い間、呼気弁に使われてきた。しかし、最近では流量制御弁を用いて電気的処理でPEEP圧の維持をはかる機構が開発された。呼気ガス流量の変動によるPEEP圧の変動を避けるためである。また、これはBIPAPや未熟児用のtime cycle,pressure relief ventilationモードを可能にした。
3)制御機構
(1)メカニカル式
歯車やカム、バネなどの機械的機構を応用する。現在では移送用や救急用、在宅療法用、麻酔器用、等の簡易な機器に多用される。簡単な機構ほど信頼性が高い。
(2)ニューマティック式
空気の流れを利用した回路で制御機構を構成する。小型軽量で電気を消費せず、レスポンスの早い機構をつくれるので、古くより繁用されてきた。しかし呼吸モードの高性能化に伴い、構造が複雑化した。そのため信頼性が低下し、またガス消費量も増大した。現在では簡易機に使われるだけである。
(3)電子制御式
真空管や半導体素子を利用して構成する。アナログ制御時代はニューマティック式を凌駕できなかったが、デジタル回路技術の発展に伴い高度な制御が可能になった。論理判断は素子間での配線構造で決定される(ハードウェアー処理)。Siemens-Elema社のServo-900が先駆機である。
(4)マイクロプロセッサー式
マイクロプロセッサーを利用して、ソフトウェアーにより処理を行う。複雑な判断でもソフトウェアーの記述で簡単に行えるので、現在ではほとんどの機器に利用されている。しかし、マイクロプロセッサーの暴走の問題が完全に解決されたわけではない。
4)モニター、アラーム
以下の3点を監視し、異常時に警告する。
(1)人工呼吸器の作動状況
電源、酸素配管圧、エアー圧、マイクロプロセッサーの作動、酸素濃度、吸気温度、PEEP圧上限、PEEP圧下限、等が監視される。最近では電源投入時にこれらをセルフチェックする機器が多い。
(2)患者状態の呼吸状況
吸気ガス流量、吸気ガス量、呼気ガス流量、呼気ガス量、分時換気量、肺コンプライアンス、等を監視する。最近ではこれらをグラフィカルに表示する機能も用意されている。
(3)ベーシック項目
(1)(2)の監視機能は機器の複雑化に伴い、より高度化されているが、現在でも簡便かつ重要な項目として、低ピーク気道圧(low peak pressure alarm)、高ピーク気道圧(high peak pressure alarm)、換気回数の3項目は如何なる機器であっても不可欠である。低ピーク気道圧は陽圧式の換気がうまく行われていないことを示し、呼吸回路リークや機器の異常、不適切な設定を警告する。高ピーク気道圧は呼吸回路の異常、不適切な設定、ファイティング、機器異常を警告する。換気回数は、患者状態と機器作動が適正であるかを示す。なお、呼気分時換気量の監視機構は、過去において価格や機構上の制約で省かれる傾向にあった。しかし人工呼吸の目的が換気の維持であることが認識され、呼気分時換気量の監視機構はほぼ必須となった。
人工呼吸器には多種多様な呼吸モードが実用化されているが、人工呼吸器が実行する本質的な仕事は、次の4項目に要約される。(アラームやモニター等の付随的な仕事を含めると6項目になる。)
(1)吸気認識
患者の吸気の開始を認識し、これと同期させて機械的換気を開始する。(これをトリガー機構と呼ぶ。)そのためには吸気ガス流量、吸気ガス量、気道内圧の変化、呼気時間を計測する。これらが一定の条件を満たせば吸気とする。
(2)吸気ガス制御
吸気ガス発生機構から吸気ガスを供給する。その間、呼気弁を適切な圧で閉じる。患者が吸気する程度(気道内圧、吸気ガス流量、吸気ガス量)に基づいて機械が提供する吸気ガス流量を調整する。また、先行する呼吸の呼気ガス流量や呼気ガス量、も制御情報として利用される。
(3)呼気認識
気道内圧の変化や吸気ガス流量、吸気ガス量、吸気時間を計測し、これらが一定の条件を満たせば患者の呼気の開始と認識し、機械的吸気を終了し、呼気を開始する。しかし、陽圧式人工換気中に患者の呼気開始を遅延なく認識することは困難である。そのため、吸気終了認識でこれを代用するか、あるいは、呼気開始認識をはなからあきらめて、単純に時間で吸気を終了させる手法が用いられる。なお、吸気ポーズを付加した場合は、吸気終了後に、吸気弁と呼気弁の両方を閉じた状態の時間が置かれる。この際には患者の肺は吸気のままで保持される。
(4)呼気ガス制御
これには吸気ガス流量を絞り、バイアス流もしくは定常流量を呼吸回路内に流す、呼気弁を開く、適正なPEEPを維持するように呼気弁の開き具合を調整する機能が含まれる。もしPEEPが維持できない場合には、吸気ガス発生機構からのバイアス流もしくは定常流を増量する。
現在臨床応用されている各種の人工呼吸モードを分類すると、(1)Conteneous Mandatory Ventilation、(2)Intemittent Mandatory Ventilation(3)自発呼吸モード(CPAPやBIPAP、APRV、等)、の3つに区分することができる。また、これらはさらに吸気開始認識、吸気ガス制御、呼気開始認識、呼気ガス制御、の4段階での作動様式の差異により区分できる。一方、新しい換気モードでは、患者の換気量をリアルタイムに計測し、これを強制換気のタイミング制御や吸気制御の指標に利用するものがある。この視点でも分類可能である。なお、吸気開始認識であるトリガー機構は各モードにおいて共通の問題であるので、トリガー機構を特別にここで独立して扱う。他の3段階は次章の「各論、人工呼吸モード」で扱う。
人工呼吸とは本来は生体が自ら行うべき呼吸仕事の一部もしくは全てを他動的に行う行為である。駆動部位によって以下の2方法がある。
1)体外式
間接的に胸廓や横隔膜を駆動し換気を行う体外式は気道の確保が不要であるので、救急蘇生法にきわめて有用である。しかし、換気の確実性や効率の面で不利である事、換気量や気道圧を直接制御できない点、応答性の良いシステムを作るのが困難な点、装置自体が大がかりになる割に人工呼吸器としての調節性に乏しく臨床適応が限定される点、PEEP/CPAPの有用性が確立されているのにもかかわらずこれらを応用できない換気法である点、などから、現在では治療用には不向きと見なされている。国内では、厚生省の研究費を基に開発されたOKT-100(木村医科器械)が市販されている。
2)気道換気式
直接的に気道内を換気する方法で、換気の確実性があり、エネルギー効率が良いので、迅速で応答性の良いシステムを構築可能である。また、換気量や気道圧を直接モニターできるのでこれらを直接制御できる利点がある。そのために、現在では気道換気式が人工呼吸法の主流であり、標準である。しかし気道の確保が必須条件で、これが適応を制約する要因になっている(これに対する解決がBiPAPに代表される低侵襲性の換気法である)。気道換気式は高頻度換気法(60BPM以上)と生理的な換気回数で行う換気法の2つに大きく区分される。現在は一般的に、吸気相・呼気相における圧の違いも加重して以下の4方式に分類する。
(参考;しかし、陽圧式換気法しか存在しない今となっては、陽陰圧式を排除して、CPPVとIPPVの概念をまとめた(i)陽圧式換気positive pressure ventilation方式と特殊な(ii)高頻度換気HFV方式の2つに分類する方が臨床的である。)
(1)陽陰圧式(positive-negative pressure ventilation)
吸気時には気道に陽圧を加えて吸気補助をし、呼気時には陰圧を加えて呼気補助をする。active inhalation active exhalation方式である。1960年代までの人工呼吸器には呼気ガス吸引機構が設けられている機種もあったが、後述のPEEP/CPAPの有用性の確立に伴い、1960年頃より陽陰圧式人工呼吸器は市場より消滅した。現在では陽陰圧式の用語は死語である。なお、新生児用の人工呼吸器には呼気ガス吸引機構を設けてあるが、これは患者回路抵抗を相殺するためで、気道を陰圧にするためではない。
(2)間歇的陽圧換気(IPPV, Intermittent Positive Pressure Ventilation)
吸気時に陽圧を加えるが、呼気時には圧を解放するだけで、胸廓や肺の弾性により受動的に呼気を排出する。active inhalation, passive exhalation方式である。間歇的に陽圧を加えるのでこれを間歇的陽圧換気(IPPV)と呼ぶ。つまり陽陰圧式に対する用語がIPPVである。しかし、IPPVは歴史的な用語で、これが提唱された時点では、従圧式換気(volume limited)、従量式換気(pressure limited)という概念があっただけで、IMV(intemittent mandatory ventilation)もPCVも(そしてPSVも)存在しない。本来、IPPVは陽陰圧式換気法の対極に位置する用語である。現代的な語義よりこれを再定義すると、IPPVは陽圧式換気法の総称であると分類でき、IPPVにはIMVとCMV(continuous mandatory ventilation)、CMV(Controlled Mechanical Ventilation)、PCV、PSV、等を含む。つまりIPPVとCPPVは現在の換気法の根幹をなす換気概念で、これらは共に歴史的使命を終えた用語である。しかし、Drager社はいまだに(歴史的解釈を堅持して)、IPPVをCMV(continuous mandatory ventilation)とCMV(Controlled Mechanical Ventilation)の両方の概念で現在も使用しているので、一般ユーザーに用語の混乱を生じさせる原因になっている。
(注;IPPB ,Intemittent Positive Pressure Breathingも歴史的な用語で、従圧式の人工呼吸器を用いて、肺の拡張とネブライザー療法を行う肺の理学療法を意味する。一般的に、人工気道下に連続的におこなうのがIPPVで、挿管せずマウスピースをくわえて一時的に行うのがIPPBである。)
(3)持続的陽圧換気法(CPPV; continuous positive pressure ventilation)
PEEP(positive end-expiratory pressure)とは、呼気時に一定の圧を加えることで呼気終末での肺胞の虚脱を防ぎ、肺の酸素化能を改善し、重症呼吸不全の治療に用いられる手法である。1969年にAshbaughらがIPPVにPEEPを加えた換気法をCPPV(continuous positive pressure ventilation)と呼びこの有用性を発表したのが、CPPVの語源である。IPPVは陽陰圧式換気法に対するアンチテーゼであるが、CPPVはIPPVよりさらに一歩踏み込んで、呼気時での陽圧(PEEP)の利点を評価した換気法である。すなわちCPPVはIPPVの特殊型ではあるが、現在の人工呼吸モードはすべてCPPVの概念(すなわちPEEPを付加した換気法の総称)の範疇にある。ちなみに自発呼吸に一定の圧を加える換気法をCPAP(continuous positive airway pressure)と呼び、原理はPEEPとほぼ同じである。PEEP/CPAPは高く評価され、現在の人工呼吸器には必須の機能である。したがって現在市販されている人工呼吸器はすべてCPPV/IPPV機である。陽陰圧式が存在した過去はともかく、現在あえてCPPVとIPPVの違いを区別する意義はなく、CPPVもまた歴史的使命を終えた用語である。
(4)高頻度換気(HFV; high frequency ventilation)
駆動方式の違いによりHFJV(high frequency jet ventilation)とHFO(high frequency oscillation)に分類できる。前者は高圧ガスを高頻度に断続してジェット流を作り、ベンチュリ効果で周囲の空気を引き込みながら、振幅を増幅させる方式で、後者はスピーカー駆動、電磁モーター(リニアもしくは回転式)によるピストン駆動、吸気弁の高頻度開閉、呼気弁の高頻度開閉、などにより患者回路に振動を付加する方式である。学派によってはHFOとHFVは明確に区別されていないこともある。HFO+PEEPでHFJVと同等と言われている。HFVは通常の換気に比べて低い気道圧で換気することが可能になるが、換気の確実性が劣る。したがって、HFVは従来の換気モードと併用するのが現実的である。しかし、HFVは非生理的な換気法であり、呼吸中枢の発達した成人では患者の違和感が強い。さらに、自発呼吸を温存し、人工呼吸器との同調性の改善による換気法の利点が高く評価されている現状では、成人での応用は限定される。(注;HFJVは気道のクリーニング効果があるのでネブライザーに用いたり、呼吸回路が開放されていても換気を維持できる利点があるので気管形成術などの術中管理に用いたりする。)一方、新生児は、@呼吸中枢が未熟である、Aトリガーの問題を無視できる、B陽圧換気の弊害が生じやすい、CHFVの換気エネルギーが弱くても実用になる、DHFVは自発呼吸の抑制作用があるので機械換気に同調させやすい、等の特性があり、新生児用の人工呼吸器にはHFV機能が付加されていることが多い。定常流方式のCPAPにHFVを付加するのは論理的に正しいが、IMV(SIMV)の場合、HFVを呼気相に加重するとトリガーの検出がきわめて困難になり、また、エアートラッピングなどにも配慮が必要となる。酸素化の効率からみれば呼気相にも加重するのが望ましいが、現状ではこれらの矛盾は未解決である。そのため各種の形態のHFVが、新生児用人工呼吸器用として提唱されている。
本来は麻酔用に開発された強制換気を自発呼吸のある患者に適応すると、自発呼吸と機械的呼吸がうまく合わず、両者がぶつかりあうファイティングの問題が生じる。患者の吸気努力の始まりと強制換気を同期させるトリガー機構が実用化されたのは、それを解決するためである。しかし患者の吸気の開始と機械的強制換気の開始が同期したとはいえ、患者の自発呼吸を自由に容認する事と、機械的調節呼吸を提供することには、根本的な矛盾が存在する。これを解決するために、患者が自由に呼吸できる自発呼吸相と機械的強制換気を与える強制換気相を時間を区切って交互に提供するIMVという画期的な手法が開発された。強制換気相でのファイティングをさらに低減するために、強制換気と自発呼吸の開始を同期させるSIMVが開発された。
(1)持続的強制換気CMV(continuous mandatory ventilation)
すべての換気が強制換気で行われる換気方式を意味する。IMVの対になる用語である。1970年頃まではIMVが普及していないので、人工呼吸はすべてCMVであった(つまりIPPVでもあった)。機械的強制換気(CMV; controlled mechanical ventilation)も同じ略語になるが、過去にはこれら2つのCMVはほぼ同じ概念を意味し、両者を混同しても支障がなかった。現在では、各種の強制換気モードが存在するので、これらを明確に区別する必要がある。残念なことに混同したままの書籍が多い。
(2)間歇的強制換気IMV(intermittent mandatory ventilation)
自発呼吸と機械的強制換気を時間軸で区切り共存させる換気法である。通常は強制換気は自発呼吸の開始に同期するSIMV(synchronized intemittent mandatory ventilation)である。最近では自発呼吸をPSV(pressure support ventilation)で補助するのが主流である。PSVは一応自発呼吸モードに分類されるが、例えばPSVレベルを高く設定すると強制換気の性格をおびてくる。つまりすべての人工呼吸モードは自発呼吸を補助するもので、強制換気と自発換気の間には明確な区別はあり得ない。
注;CMVはcontinuous mandatory ventilationの略で、controlled mechanical ventilationの略と混同しないように注意。
参考;気道内換気法による人工呼吸法が確立されるまでの変遷と歴史
1.全身麻酔用自動換気装置の登場
1890〜1900年頃には、外科の対象が胸腔にまで拡大し、開胸手術を安全に遂行する技術がいろいろと試行錯誤されていた。気管内挿管による陽圧式換気が用いられたこともあったが(Tuffier&Hallion;1896仏, R.Matas;1899米, Kuhn;1900独)、主流にはならなかった。それは安全かつ確実に気管内にチューブを挿入する技術が普及しなかったためである。
1950年頃にはようやく、吸入ガス麻酔薬と筋弛緩薬(クラーレ)による全身麻酔の有用性が確立されてきた。全身麻酔では患者の呼吸は強く抑制されてしまうので、何らかの人工呼吸する必要が生じる。そこで、気道に陽圧を加えることで患者の肺を直接膨らませる、陽圧式換気法が併用された。当初は手動で換気していたが、換気の恒常性と確実性を得るために機械的な換気装置が開発された。1940〜1950年代にかけて、「自動的に理想的な換気をする機械」を意味する調節呼吸装置"Controller"が実用化された(つまり機械的調節換気controlled mechanical ventilationの概念ができた)。これらは別名"Automatic ventilator"と呼ばれた。Spiropulsator(1940頃、スウェーデン)、Blease Pulumoflator(1950頃、英)やJefferson ventilator(1950年頃、米)が代表である。
2.麻酔用以外の人工呼吸
治療用の気道内換気式の人工呼吸法の確立は、1952年のコペンハーゲンにおけるポリオの大流行まで待たねばならなかった。それまでは、安全な気管内挿管の手技が未熟で普及していなかったこと、安全な陽圧式換気法の手技が確立されておらず、むしろ陽圧式換気に伴うマイナス面が強調されていたため、気道内陽圧式人工呼吸法は呼吸療法に応用されることはほとんどなかった。鉄の肺と呼ばれる体外式人工呼吸器の方がまだまだ優位であった。ところがポリオの大流行に伴い、あまりにも多数の患者が発生したため、設備面で大掛かりな体外式人工呼吸器に収容しきれず、より簡易な気道内陽圧式人工呼吸法が応用された。気管切開による気道確保と簡単な装置による手動による陽圧式換気により、画期的な救命率を得た。その後、国を挙げての気道内陽圧式人工呼吸器の開発が推進されることとなった。Engstrom(1954)、Bang(1953)、Blease(1956)、Beaver(1953)、Barnet(1958)、Radcliffe(1953)、Drager(1955)、Benett(1957)等の多くのメーカーが誕生した。これらの中には患者の吸気努力の始まりと強制換気をトリガー機構によって同期させるトリガー機構が実用化された。それは自発呼吸と機械的呼吸がうまく合わず、両者がぶつかりあうファイティングの問題を解決するためである。これらの機器は"Controller"に対して"Assister"と呼ばれた。しかし1950年代後半までの時点では、麻酔用と治療用の機器が完全に分かれていた訳でなく、ほとんどが兼用機であった。やがて、人工呼吸器は治療用と麻酔用に分かれて進化する。治療用の人工呼吸器は、自発呼吸との同調性と換気効率の改善を解決するために飛躍的な進化変貌を遂げる。なお、治療用は別名、病棟用や長期管理用と呼ばれる。一方、麻酔用の人工呼吸器は、機構の確実性を求めて単純化し、あまり大きな進歩を認めない。現在ではベローズをガスもしくは電気モーターで駆動する方式に収束している。
3.気道内換気式(陽圧式人工呼吸法)の制御形態における分類
;Pressure Ventilation(圧換気) 対 Volume Ventilation(量換気)
a.古典的換気 ;古典的概念における従量式(volume cycle) 対従圧式(pressure cycle)の比較
人工呼吸法は(i)肺の換気の維持と(ii)酸素化能の改善を目的に行われる。この目的を達成する気道換気式陽圧式換気法として1970年頃まではpressure cycle(従圧式) とvolume cycle(従量式)の優劣が論じられた。教科書にしばしば記載されている従量式対従圧式換気の比較表はこれを反映している。Pressure cycle 方式の方が、患者との同調性やリーク補正能力にも優れていたが、当時では換気量のモニターやアラーム機構が未熟なために、確実な換気を確保できず、その後volume cycle方式(やconstant flow,time cycleによる疑似volume clcle方式)に凌駕された。
(1)量サイクル換気(機械的強制換気);古典的従量式換気
(図)
従量式換気(volume cycle方式)は、治療者が意図する一回換気量、吸気時間、吸気ガス流速、吸気ポーズ時間、呼気時間で患者を換気できるので、これを機械的調節呼吸(CMV;Controlled Mechanical Ventilation)と呼び、理想的な換気様式と評価されてきた。なかでも自発呼吸の開始と同調させるsynchronized CMV,assisted CMV,triggered CMVやこれらのバリエーションであるAssisted Volume Ventilation,Volume Assisted Ventilation,Volume Control Ventilation,Volume Controlled Ventilationは人工呼吸の標準となってきた。(厳密に表現すれば、ベローズ駆動方式以外はvolume cycleとは言えない。実際の従量式人工呼吸器のほとんどはconstant flow, time cycleによる擬似的なvolume cycleである。) しかし機械的調節換気(機械的強制換気)の概念は患者との同調性を考慮していないので、いくらトリガー機構があるとはいえ自発呼吸のある患者にとっては耐え難い苦痛をもたらし、ファイティングやそれによる気道内圧の異常上昇、肺の圧傷害、自己抜管などの弊害を誘発した。
(2)圧サイクル換気(pressure cycle ventilation);古典的従圧式換気
吸気圧が設定値に達した時点で吸気を終了させる換気方法をpressure cycle ventilationと呼ぶ。最近ではほとんど用いられない古典的な換気法である。なお、日本語の従圧式換気の訳はこれに該当するが、現在はいろんな圧換気モードがあるので、日本語で従圧式換気が意味するところの概念には顕著な混乱がある。
(3)CPAP(Contineous Positive Airway Pressure);古典的自発換気
CPAPは厳密に言えば人工呼吸モードでなく、呼吸療法の1種である。原典では人工呼吸器を用いずCPAP装置によって行うが、現在では人工呼吸器でCPAPを行うのが簡便で、確実である。過去には、定常流方式とディマンド方式の優劣について議論があったが、現在の一流の人工呼吸器はすべて、定常流機能とディマンド機能を同じ吸気バルブ系でハイレスポンスで処理するので、あえて比較する意義はなくなった。例えばBennett社のFlow-ByやBear社の定常流設定+Flow Supplementation機能+PEEP compensator、Bird社のFlow matching、Respironics社のBiPAP、などによるCPAPは、古典的CPAP装置の工夫を凌駕した性能を簡便に提供してくれる。しかも最近ではCPAPよりPSV+PEEPを用いる方がウィーニングが容易なので、こちらを用いるのが主流なので、なおさらである。しかし、CPAP性能の悪い人工呼吸器が多数存在するのも事実である。なお、多くの人工呼吸器では自発呼吸モードの意味でCPAPのポジションをあてているが、これも用語の混乱を招く原因になっている。
b.新しいボリューム換気 (Volume Ventilation)
(1)Volume Ventilation with Flow Wave Form Control(吸気波形調節した量換気)
米国製の人工呼吸器では、機械的調節呼吸CMVの概念より踏み出して、量換気の範疇で、自発呼吸との同調性を追求した。量換気のフローパターン(普通は吸気ガス流量は一定である。これを矩形波と呼ぶ)に漸減波を用いることによって吸気圧波形を矩形波に近づける事が可能になる。漸減波は矩形波に比べて陽圧下での生理的自発呼吸パターンに近いので患者との同調性が改善されるだけでなく、圧換気の利点をも得ることができる。つまり、量換気モードでありながら擬似的に圧換気(PCV)を模倣することができる。同じ吸気時間であればPSV(pressure support ventilation)やPCVのようにピーク気道内圧も低くできる。従来は漸減波はまだオプション扱いであったが、新しいT-Birdでは標準が漸減波でオプションとして矩形波を選択するようになってきている。このように最近では漸減波を用いるのが主流である。
(2)Volume Ventilation with Flow Supplementation,Flow & Volume Augumentation(吸気流量補正した量換気)
もう一つの工夫はFlow supplementation, Flow & Volume Augumentation(Bear社)である。これは強制換気中に設定流量を超える患者の吸気要求がある場合に、自動的に吸気ガスを増量してベースライン圧が陰圧にならないように補償する機構である。Flow SupplementationによりCMVのしがらみを脱却した量換気が可能になった。これはさらにPressure Augumentation(BEAR), VAPS(Bird)に発展し、強制換気中はPCVレベル以下にならないように制御するようになる。この機能は患者の吸気量が機械的に制限されない利点や、PCVの利点、を量換気にもたらした。
c.新しい圧換気(Pressure Ventilation)
(1)PCV(p
ressure control ventilation)(図4)
機械的強制換気の欠点を改善する手法として吸気ガス流量制御をする考えを発展させ、強制換気中の吸気圧を指標にしてこれを一定化させる換気法が考案された。これはPCV(pressure control ventilation,圧調節換気)と呼ばれる。PCVでは平均吸気圧とピーク気道圧が同じなので、機械的強制換気に比べて、気道の陽圧による弊害が少ない、肺胞の拡張性に優れ酸素化能が高くなる、等の利点を持つので、最近ではほとんどの高性能人工呼吸器に搭載されているモードである。しかしながらPCVは(過去において論争になった)換気量が不確実という欠点を持つので、これを改善するためにPCV圧を自動調節して従量式換気をつくりだす方式も生み出された。これが後述するPRVC(pressure regulated volume control)やAuto Flow(オートフロー)である。
(2)PSV(pressure support ventilation)
PSVはPCVの対として考案された換気モードである。両者の違いは吸気停止条件の違いにある。前者では患者の吸気が終了した時点であるが、後者ではtime cycleで停止する。IMVの概念の中では、前者は患者の吸気呼気の両方に同調するので自発呼吸モードに分類される。後者は吸気があれば同調するが、なければtime cycleでも吸気が開始するので強制換気と見なされる。例えばSIMV(PCV)+PSVではPCVで強制換気が与えられ、PSVで自発呼吸を補助すると考える。
4)圧換気と量換気の融合
量換気、圧換気にはそれぞれ利点がある。これらを発展的組合せで融合することで両者の利点を合わせ、欠点を減じた換気モードができる。
(1)量換気、圧換気を経時的に並べる....SIMV+PSV
SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)(
図5)
SIMVは強制換気相と自発呼吸相より成り立つ。自発呼吸にはPSV補助するのが一般的である。観点を変えれば、SIMV+PSVは量換気と圧換気を時間軸で分割して並べることで両者を両立させる画期的な方法である。それぞれの利点を生かし欠点を最小化するので、現在では標準的な換気法として評価されている。
(2)量換気、圧換気を同時に開始する.....Pressure Augumentation,VAPS
Pressure AugumentationはBear1000の機能で、VAPSはBird 8400,T-Birdの機能である。量換気と圧換気を融合させたモードで、強制換気にVolume VentilationとPSV(Pressure Support Ventilation)を同時に重ねて提供する機能である。患者の自発呼吸が弱い状態ではVolume Ventilationが優位になるが、患者の自発呼吸が強ければ、PSVが優位に提供される。AutoFlowと比較した場合、圧波形が必ずしもPCVのような矩形波にならない点が欠点であるが、利点として吸気圧がどんどん上がってしまう現象が起こらない。AutoFlowでは、設定値を超える吸気量は短期的には許容されるが長期的には許容されない欠点があるが、Pressure Augumentation,VAPSでは、設定値以上であれば連続的に許容される。なお、Pressure AugumentationとVAPSはオリジナルを共にする類似の換気モードであるが、吸気終了条件(terminal flow rate)にわずかな差がある。
(3)PCV圧を自動調節して擬似的に従量換気をつくる.........AutoFlow,PRVC
AutoFlowはDrager Evita4において利用でき、PRVC(Pressure Regulated Volume Control)は、Siemens Servo 300で利用できる。両者は類似した概念の換気モードで、簡単に表現すれば、先行する換気において計測したコンプライアンスに基づいてPCVレベルを演算し自動設定することで、圧制御型の換気で擬似的に量換気を提供する機能である。これはPCVの利点とCMVの利点を融合した換気様式である。PCVレベルを決定する演算処理やテスト換気の方法などで、AutoFlowとRPVCとに若干の差があるが基本となる原理は同じである。しかし、AutoFlowはsCMV,SIMV,EMMV,等のすべての換気モードで付加できる点が優位点で、PRVCがAssist/Control(シーメンスはVCVと呼ぶ)のバリエーションでしかない点に比べると、臨床応用の可能性が格段に拡大されている。そのためにAutoFlowは別の意義も併せ持つ。
(参考AutoFlowの意義:量換気における米式と欧式の統合)
CMV(機械的強制換気)の概念では原則的に吸気ポーズ時間を付加するが、これは肺での拡張不均衡を減じ、酸素化能を改善しうる。しかし自発換気のある患者にとっては強制的な吸気停止をもたらすので、ファイティングの原因になりうる。一般的にヨーロッパ式の量換気は機械的強制換気を自発呼吸に同調させるsynchronized CMVという概念が用いられる。吸気ポーズ時間は原則的に必ず付加されるべきものと考えられて、吸気ポーズを省いた設定は困難か、不可能なことが多い。一方アメリカ型は(CMVの概念にこだわらず)Wave FormやFlow supplementation機能を付加し、自発呼吸にボリュームをうまく加重する換気を重視する。したがって原則的には吸気ポーズはなく、オプション扱いで必要時にのみ選択する。両者は同じ従量式換気でありながら、相容れない換気モードとして歩んできた。AutoFlowでは、強制換気の吸気時間すべてが吸気ポーズとも、また吸気時間ともみなせるようになるので、狭義の吸気ポーズ時間はなくなる。もう一つの利点は呼気弁が吸気圧で閉じられている点で(BIPAPシステムの恩恵で)、吸気時間中であっても患者は呼気が可能である。また、AutoFlowでは原理的にflow supplementation機能も内包されているので、強制換気時に患者が設定吸気ガス流量を超えて吸気しても気道内圧が陰圧になる弊害がない。つまりアメリカ型の量換気の概念とヨーロッパ型のsCMV、その上CPAPの概念が、ここではじめて融合された事になる。
(4)PSV圧を自動調節して擬似的に量換気をつくる..........Hamilton MMV,VS
Hamilton流のMinimum Minute VentilationとSiemensのVolume Supportは演算処理が異なるが、AutoFlowやPRVCと同じように一定の換気量になるようにPSVレベルを自動調節する換気モードで、これらも圧換気でありながら擬似的に量換気を実現するモードである。BiPAPなどの低侵襲性人工呼吸器では、PSVモードでも、time cycleで吸気が始まるようにできる。
(5)量換気でPCVを模倣する.....Volume ventilation with Decelerating Wave Form
量換気と圧換気の決定的な差は、フロー波形にある。圧換気では漸減波が観測されるが、量換気のフロー波形でこれを模倣すれば、量換気でありながら、圧換気を擬似的に実現できる。おもにアメリカ型の量換気に採用されている。現在のところ+50%〜-50%への直線的な変化パターンしか用意されていないが、将来、各種のパターンを自動選択できるようになれば、AutoFlowやPRVCが抱える換気量があいまいであるという問題が解決される。さらにFlow AugumentationやFlow Supplementation機能を付加すれば設定値以上の吸気量を長期的に許容する事も可能になる。
(6)従量式換気のピーク圧をカットする.................PLV(Pressure Limited Ventilation)
Drager Evita以降の機種において利用できる機能で、従量式強制換気において、設定した圧以上に気道内圧が上昇した場合、吸気ガス流速を減じて、設定圧以上にならないようにピークカットする。つまり設定圧以上になるとvolume cycleのPCVになる(吸気時間は変動するので、その分だけ吸気ポーズ時間が変化する)。 しかし設定によっては換気量が維持できないこともある。
(7)これらの組合せ
これらは文字どおり順列組合せでできたモードで、臨床的な意義や設定方法について、多くの議論がある。
(a)SIMV(Pressure Augumentation,VAPS)+PSV
(b)SIMV(AutoFlow)+PSV
(c)SIMV(PLV)+PSV
(8)異なる圧換気モードの融合
(7)のモードと似ているが、これらは、圧換気だけを組合せたモードである。
(a)BIPAP+PSV
(b)SIMV(PCV)+PSV
(1)BIPAP(Biphasic Positive Airway Pressure)
CPAPでは、強制換気に比べて低い気道内圧で肺の酸素化能を改善できるが、ある程度の自発換気能力を要求する点が弱点である。二つのCPAPレベルを交互に切り替えることでCPAPに換気補助能力を付加したのがBIPAPである(狭義のBIPAP)。Drager社のEvitaで利用できる。当初は一つのCPAP相に2〜3個以上の自発呼吸を含むものと定義されていた。しかし、これは換気補助能力に限界があり臨床応用も限られていた。最近では、BIPAPシステムによるPCVやSIMV(PCV)モードも含めてBIPAPと称している(広義のBIPAP)。したがってBIPAPは、二つのCPAPレベルを交互に切り替えて作り出される換気モードの総称である(低圧相にはPSVも付加可能)。狭義のBIPAPはCPAPの範疇であったが、広義のBIPAPは圧換気Pressure Ventilationの範疇になる。例えばDrager社がBIPAP+ASBと呼ぶ換気モードはBIPAPシステムによるSIMV(Pressure Control)+PSVを意味する。
(2)APRV(Airway Pressure Reliese Ventilation)
狭義のBIPAPの変法で、低圧相には一つの呼気のみの状態をAPRVと呼ぶ。
(3)BiPAP
BiPAPはRespironics社の登録商標で、BiPAPのBiはIPAP(Inspiratory Positive Airway Pressure)とEPAP(Expiratory Positive Airway Pressure)の2つのPAPという意味である。「吸気時の陽圧」と「呼気時の陽圧」により換気援助をする装置で、マスク下にリークを前提として呼気弁機構を使わず換気援助を可能にする点は革命的である。低侵襲性を最大の特徴とするが、換気モードとしての視点だけで分類すれば、PCVやPSV,BIPAP,CPAPと類似である。
6)新しい概念の換気モード
Volume VentilationやPressure Ventilationといった概念や枠組みを超越した新しい換気モードを意味する。
(1)PAV
PAV(Proportional Assist Ventilation)は、圧換気か量換気かで分類できない新しい概念の換気モードである。肺が吸気により拡張しているある時点での呼吸仕事量に対して一定の割合でこれを人工的に補助する換気モードである。パラメーターが複雑なためになかなか実用化されなかったが、Respironics社のBiPAP VisionやDrager社Evita 4、Bennett 840に、搭載され始めている。