木村医科器械
miniVent-3、miniVent-3α
1.特徴(図miniVent-3の外観写真図;miniVent-3αの外観写真)
 miniVent-3はKV1+1の後継機種として開発された。救急外来、搬送用を想定した、酸素ガス駆動源方式の小型軽量の簡易機である。外部DC電源、内蔵バッテリー、AC100Vの電源で動作可能である。KV1+1で曖昧さがあった操作はデジタル設定になり簡便になった。酸素濃度は45%(エアミックス時)と100%しか選択できない。一方、miniVent-3αはKV-3の後継機種である。酸素濃度調節用にブレンダーを内蔵しているので、酸素濃度を自由に設定できる。しかし圧縮空気を必要とするので移動用としては使えない。CPAPやSIMVの自発呼吸用に定常流機構も装備している。
2.性能
 モード...............................A/C、SIMV、CPAP
 一回換気量.......................50-2500 ml(50-2250 ml、エアミックス時)
 吸気ガス流量...................10-50 LPM
 呼吸回数............................2-60 BPM
 吸気時間............................0.3-30 sec.
 PEEP...................................0-20pH2O
 定常流................................0-40 LPM(miniVent3+αモデルのみ)
 重量....................................5 Kg
 消費電力............................AC100v 18VA , DC 12v 0.4A
 バッテリー作動時間........内部 約2時間
 
3.機構の概略(図;miniVentのニューマティック回路)(図;miniVentの制御機構概念図
 
 miniVent-3では、酸素のガス圧が駆動源になる。酸素はレギュレーターで減圧される。エアミックス時(O2が45%)には、電磁弁SL1の断続で吸気ガスをつくる。吸気流量はニードルバルブNL1で調節される。その後AIRミキサー(ジェットベンチュリ効果)で希釈する。100%酸素駆動用の吸気ガスがミキサーに逆流しないように逆止弁CV1が設けられている。一方、100%酸素時には電磁弁SL2とニードルバルブNL7で吸気ガスがつくられる。
 miniVent-3αのニューマティック回路はKV-3とほとんど同じである。違いはPEEP調整機構への制御用ガスの遮断弁の有無である。酸素濃度をブレンダーで調整したガスが電磁弁SL1とニードルバルブNL-1で吸気ガスとなる。SL4はネブライザー用の電磁弁で、吸気時のみネブライザー駆動用のガスを流す。SL2は定常流用の電磁弁で、呼気時にニードルバルブNL2で流量を調節してガスを流す。
 呼気弁駆動回路は両機とも共通である。PEEPニードル弁NL5でPEEP圧を調整する。呼気弁を閉じる圧は呼気弁ソレノイドSL3で切り替えている。KV-3ではPEEP圧調整機構の前に電磁弁が設けられていたので、電源OFF時にはガスを消費しないがminiVent-3αでは省略されているので、電源OFF時でもPEEPが設定されているとガスを消費するので、注意が必要である。
4.操作(図;miniVentの操作パネル)(図;miniVentの患者回路
 酸素濃度、モード、吸気時間、換気回数、トリガー感度(圧トリガー)を操作パネル上の矢印で設定する。一回換気量はダイアルを回して設定する。このダイアルはニードルバルブを調整するが、回転角度は電気信号で制御ボードに伝えられて一回換気量として表示される仕組みになっている。気道内圧のアラームの上限、下限を設定すれば、とりあえず作動可能である。PEEPは気道内圧を見ながらつまみで設定する。PEEPを設定すると電源OFF時でも制御ガスを消費するので注意が必要である。
拡張機能として、パネル上の*と警報圧下限の▼キーを同時に1秒以上押すと、自動的に気道内圧のアラーム上限、下限を自動設定してくれる機能がある。
5.モニター、アラーム
 無呼吸アラーム(15秒固定、)バッテリー低下、AC電源遮断、供給ガス圧異常、気道内圧、などのアラームが装備されている。気道内圧がバーグラフで表示される。
6.メンテナンス
 定期的に機能チェックを行う。3~6ヵ月ごとに内蔵電池を充電する。定期的に保守点検をする。
7.欠点
1)miniVent-3は搬送用として見た場合に、本体はとても軽量なのが利点である。しかしバッテリー作動時間がやや少なく、酸素消費量が多いので状況によっては周辺機材の重量が多くなる。
2)電源OFF時でもPEEPを設定しているとガスを消費するのは合理的でない。OFF時には制御用のガスを遮断する機構を設けるべきである。むしろPEEP機構を省いた方が良い。
3)miniVent-3αは性能的にやや中途半端である。SIMVやCPAPでの自発呼吸に定常流で対応しているが、リザーバーバッグがないのでCPAPへの対応能力が決定的に不足している。定常流を使用するとガスの消費量が多い。おそらく主な顧客である中小病院では酸素ボンベで供給しているケースが多いと思われるが、その場合には酸素切れに注意が必要である。
4)miniVent-3はガスミックス時に負荷によって換気量が減少する。