VersaMed
iVent201
1999年にカナダで生まれたVersaMed社は「software-based smart mechanical ventilators」のキャッチコピーが示すように、洗練された簡潔な機構を高度のソフトウェアーで制御する先進的なメーカーである。社名に入っている「versatile」は多芸多才の意味であるが、その名のとおりに、ICU仕様、MRI対応、移動用、在宅用、高度のモニター機能、小型軽量、安価など、活躍の場が広い。酸素は低圧ガスも入力できる。iVent201は以下の4モデルから選択できる。(1)ホームケア(HC)−最小の機能のついたベーシックな機種、(2)サブアキュート(SC)、(3)アルタネートケア(AC)、(4)インテンシブケア(IC)−最大の機能がついた機種。
2.性能
モード.............................A/C(VC,PC)
SIMV(VC,PC)
Adaptive Bi-Level
CPAP
PSV
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Adaptive Flow
Adaptive Time
Backup Apnea Ventilation
Easy Exhale
Adjustable Rise Time
一回換気量.......................50-2000 mlL
吸気ガス流量...................1-120 LPM
最大吸気ガス流量...........180 LPM
呼吸回数............................1-80 BPM
吸気時間............................0.3-3 sec.
PEEP...................................0-20 hPa
重量....................................10 Kg(バッテリーを含む)
消費電力............................AC100-240v max 2.0A
DC 10-30v max. 8.5A
バッテリー作動時間........内部 2時間
1)ブロワーアセンブリ
ブロワーアセンブリの機能は、(患者に供給する酸素とエアーの混合された)ガスの圧力と流量を発生させ、患者に供給することである。そして、このアセンブリはモーター、羽、カバー、ハウジング、マニホールドから構成される。モーターはブラシレスDC モーターで、電源ユニットから供給される電圧により制御される。この電圧は、スイッチング基板上のモータードライバーにより制御されるPWM(Pulse Width Modulation) 方式で発生する。モーターの軸には羽が取り付けられ、設定された圧力と流量が得られるよう、回転が可変される。ガスは、ブロワーアセンブリ下部に位置するマニフォールドから吸入される。
2)酸素ミキシングシステム
ベンチレータから患者に供給されるガスは、エアーと酸素が混合されたものである。酸素ミキシングシステムは、酸素濃度をコントロールする。このシステムは、混合バルブ(ステッパーモーター、ギャー、シャッター)、エアインレットフィルタ、酸素圧力スイッチ、酸素バルブ、ガルバニック方式酸素センサにより構成される。ルームエアーがエアインレットフィルタ(5μ)を通り、ガス回路内部に入る。また、この部分には消音のためのマフラーが取り付けられている。ステッパーモーターに取り付けられたシャッターはエアーと混合される酸素を制御する。シャッターの一番端側には、100%酸素かエアーが供給され、設定された酸素濃度になるよう間欠的に動く。酸素センサの測定値は、正確なシャッターの位置と酸素濃度の調節に利用される。吸気相においてブロワーは、マニフォールドに圧力を供給する。シャッターがエア側の位置に無い場合、酸素バルブが開き、要求された酸素がマニフォールドに供給される。呼気相においては、酸素バルブが閉じることで逆流を防ぐ。
3)電磁弁システム
電磁弁は2つの機能を持つ。一つは、安全弁として過剰圧をリリーフすることで、もう一つは要求された圧波形を供給することである。電磁弁は2個あり、シリコン製のバルブ(大・小)プランジャー、スプリングから構成される。陽圧のリリーフ機能は、安全を保つためのものであり、自動的に制御される。電磁弁は、ノーマルクローズで、患者の吸気相では低圧のエアーが供給される。圧力が安全範囲を超えると、スプリングで制御される電磁弁が開き、エアーフローはマニフォールドからバイパスされる、閉ループシステムである。安全な範囲の圧力は、スプリングにより決定される。電磁弁システムは、チューブのバイパスとして設計されている。開いた時、電磁弁システムは“ショートサーキット”となり、早く圧力が降下される。要求された圧波形は、プログラムにより制御される。毎呼気の始まりに、バルブ開くことで、早くPEEP 圧レベルまで気道内圧が降下する。要求された圧波形の制御は、電磁弁の開閉と、ブロワーの回転速度を変えることで行われる。また、2つの電磁弁は、“イージーエクスヘル”機能のためにも働く。呼気相において、短い時間で呼気が開始されるよう、PEEP 圧レベル以下に圧力が降下させることでこの機能を実現する。
ベンチレータからのガスは、患者回路を会し患者に供給される。患者回路は、標準の内径22m回路で、Yピースに一方弁と流量センサが内蔵されている。PEEPは専用の呼気弁に、ベンチレータから圧力を供給することで維持される。
5)制御系
メインCPUは486プロセッサーである。標準のPCに使用されるメモリー、フロッピーディスク、シリアルポート、IDE ドライブポートとVGA 出力をサポートしている。加えて、ウオッチドックタイマー、LCD ディスプレイをサポートし、PC104 バスが使用される。本体背面には、キーボード、RS232C シリアルポート、そしてVGAモニターポートが配備される。メインPCBは、全てのセンサー、制御とインタフェースの機能を有し、ベンチレータをコントロールする。(ただし、電源インターフェースとモータードライバはスイッチングPCB により制御される)
4.操作
電源を入れるとセルフテストが行われ、その後に体重入力画面になる。コントロールノブを回して体重を選択し、ノブを押して確定する。「ゼンカイ」を選択すると前回電源OFF時の設定になる。コントロールノブを回してカーソルを「START」に合わせてノブをクリックすると作動開始する。
コントロールノブを回して、変更したい項目にカーソルをもっていき、ノブを押して選択し、ノブを回して数値を入力し、その後にノブを押して確定する。モードにカーソルをもっていくとモード選択画面がでるので、希望のモードにカーソルを移動し、ノブを押して確定する。「ジドウ」を選択するとAdaptiveになり、最適値を適時自動入力してくれる状態になる。
3)アラーム設定
「MENU」にカーソルを合わせて、ノブを押して選択するとメニュー画面がでるので、「アラームセッテイ」を選択し、アラーム設定画面をだし、「ニュウリョク」を押して設定可能にし、その後に希望する項目を選択して希望の数値を入力する。
3)呼吸モードの特性
Adaptive Flow, Adaptive Rise Time, Adaptive Time, Easy Exhaleと名付けられた機能が装備されている。これらは吸気ガス流量、吸気の立ち上げ速度、吸気時間などを実測値に基づいて自動調節して患者の呼吸状態に適応させる機能であるが、制御方法の詳細は公表されていない。おそらく設定吸気ガス流量を実測吸気ガス流量に近い値を自動的に入力していくアルゴリズムであろう。同様に吸気時間も実測値に近い値を設定値に自動的に入力していると思われる。Adaptive Rise Time はオーバーシュートやアンダーシュートが最少になるようにサーボループのゲインを自動制御するアルゴリズムであろう。Easy Exhaleは呼気弁の制御を圧によるサーボ制御に加えて、強制的に補正値をあらかじめ入力しておくことによって呼気初期の圧上昇を抑える機能と思われる。
4)トリガー方式
フロートリガー1-9LPMと圧トリガー-0.5-8cmH2Oの併用もしくはどちらかを選択できる。両方ともOFFも選択できる。
iVent201のBi-LevelはNPPVモードを意味する。マスク換気用のモードであり、一般的に用いられているBIPAPやBi-Levelの用語と意味が違うので注意が必要である。
アラームには、呼吸回数、分時換気量、圧、無呼吸、酸素濃度、リーク、電源、バッテリー状態、などがある。モニター機能には、圧・フローのグラフィック波形や、換気パラメーターの実測値、圧・フローと圧・ボリュームなど各種の呼吸診断ソフトウェアーや肺メカニクスを表示する機能が備わっている。
構造の概略で説明した。専用の回路を使用する。
7.メンテナンス
冷却用通気孔と冷却用エアインレットフィルタは使用1,500 時間( または3 ヵ月)毎、または必要に応じて清掃。冷却用通気孔と冷却エアインレットフィルタの清掃には、掃除機等をご使用する。エアインレットフィルタは使用500 時間(または1ヵ月)毎に、または必要に応じて交換。再使用不可。バッテリーパック 保管90 日毎に再充電する。2 年毎、または必要に応じて、交換。実際の寿命は、使用・保管状態により決まる。他のアクセサリーは添付文書・取扱説明書に従う。VersaMed 指定のサービスエンジニアによって、10,000 時間または2 年毎にニューマチックアセンブリバッテリーと5,000 時間PM キットを交換する。
8.欠点
1)日本語のメニューがカタカナなので、とても読みにくい。英語のままの方がまし。
2)Bi-Levelモードは誤解されやすい名前なので、NPPVとすべきである。
3)486プロセッサーがグラフィックから入力、バルブの制御まですべてコントロールするので、パソコンのようにフリーズしてしまう可能性がある。バグのないソフトウェアーはあり得ないので若干の危うさを感じる。一般的に他の人工呼吸器ではこれらを複数のプロセッサーで分担処理してフリーズによる機器の停止を最小限にしている。また、総合監視して自動的に再起動などおこなう機器も多い。
4)在宅用としては、安定性や止まらないことも重要な性能である。常時監視されていない自宅でパソコンに命を預けるのはどうであろうか。