ResMed
NIP Nasal(VPAP II ST),VPAP III STA
1.特徴図;VIP IIの外観写真:NIP nasal本体に専用条件設定器UCU1が接続されている、図;VIP III STAの外観写真
 1989年にオーストラリアで生まれたResMed社は睡眠時無呼吸の治療機を専門とする会社である。やがてNIVが普及するにつれ、ResMed社はグローバル企業に変貌した。VPAP II STの日本仕様はNIP nasalと呼ばれるが、日本人仕様のマスクも併せて供給された。その後、VPAP IIはVPAP IIIにモデルチェンジした。最大フローが増量され、リークに対する寛容性や、トリガーやサイクル設定が変更できなど、性能と操作性が改良された上で重量まで軽減されている。VPAP IIIには3モデルあり、VPAP III STAはシリーズ最強モデルである。いずれにせよ、小型軽量を特徴とし他社製品と比較してもかなり軽量である。
2.性能
    VPAP II   VPAP III STA
モード   CPAP, S, T, S/T   CPAP, S, T, S/T
一回換気量   N/A   N/A
吸気ガス流量   150 LPM 以上   220LPM以上
呼吸回数   5-30BPM   5-30BPM
吸気時間   0.2-10.8 sec.   0.1-4sec
EPAP   2-25pH2O   3-25 pH2O
IPAP   2-25pH2O   3-30 pH2O
重量   3.5 Kg   2.3Kg
消費電力         AC110-240 v,200VA
DC12V     option, 3A max.
 
3.機構の概略図;VIP IIの構造概説図:モーターの回転数が変化してIPAPとEPAPを調整する)
1)概略
 機構の詳細については全く公表されていない。BiPAPではブロアーの回転数は一定でバルブでのリリーフ量によって吸気ガス流量を調整するが、ResMedではモーターの回転数を変化させて吸気ガス流量を調整する。この方式では駆動系の慣性モーメントによるレスポンスの遅れが危惧されるが、社内資料によると遜色がないというより、かなり優秀のようである。ただし、残念ながらこれらのデーターは公開されていない。
2)Vsync(図;VPAP IIIのVsyncの効果
 VPAP IIIではマスクリークに対して自動的にベースラインを補正して感度調節する機能が追加された。これをVsyncと命名している。
4.操作
1)VPAP II(図;NIP nasalの操作パネル)
 NIP Nasalは専用のコントローラーUCU1がなければ設定内容を変更できないが、VPAP II STは裏画面に入れば本体のみで設定変更が可能である。つまり、患者が操作できるのは電源ON/OFFとディレータイマーだけである。ディレータイマーを押すと、5, 10, 15分かけてゆっくり換気圧が設定圧まで上昇するので、患者が受ける圧迫感を低減できる。
 NIP Nasalでは、設定を変更するには専用コントローラーUCU1を使用する(図;NIP Nasal専用コントローラー:メニューキーとオプションキーをもちいて設定する)。VPAP II では、設定画面にアクセスすると本体だけでも設定変更ができる。設定画面には右側の3つのキーを押しながら電源をONにするとアクセスできる(図;VPAP IIの設定画面への入り方)。次にMENU△▽キーを用いて設定項目を順次選択する。設定値を変更するにはOPTION△▽キーを押して数値、ON/OFF、などを入力する。在宅で使用するには、事故を防ぐために設定をロックする必要がある。ロックするには、MENUでPATIENT MODEを選択し、OPTION△を押してYESを入力する。ARE YOU SUREと聞き返してくるので再びOPTION△を押してYESを入力して確定する。
2)VPAP III STA(図;VPAP III本体と専用リモコン
 VPAP III STAは専用リモコンを使用するとモニタリングと設定がより容易になるが、なくても操作できる。基本操作はVPAP IIとほぼ同じで、MENU△▽キー(黒色の上下の矢印)を用いて設定項目を順次選択する。設定値を変更するにはOPTION△▽(緑色とオレンジ色)キーを押して数値、ON/OFF、などを入力する。ライズタイム(Min, 150-900msec)、Tiコントロールつまり最少吸気時間(Tmin)や最大吸気時間(Tmax)も設定できる(図;TminとTmaxの説明)。サイクル時間とトリガー感度も3段階に設定できる(図;トリガー感度の設定とサイクルの設定)。
 患者との同期がうまくいかないときには、まず、マスクフィッティングを調節してみる。さらに、マスクの形状を変えたり、バンド(chin strap)を用いるとマスクリークが減少して解決することもある。Maximum IPAP time(最長IPAP時間)を適切な値に設定すると呼気との同期不全を最適化できる。
5.モニター、アラーム
1)VPAP II
 換気回数、一回換気量、リーク量、気道圧をMENUで表示できる。アラーム機能はない。
2)VPAP III STA(図;VPAP IIIのディスプレー
 QUICK VIEWのキーを押すと実測吸気時間、サイクルの状態、トリガーの状態、実測I:E比などを表示する。低圧・高圧アラーム、低分時換気量、Mask Off、マスク不良、電源異常、などのアラームがある。
6.メンテナンス
 日常的にマスクとチューブを点検、清掃、滅菌する。6ヵ月ごとにエアーフィルターを交換する。
7.欠点
1)VPAP IIではBiPAPと比較するとマスクでのリークが作動に影響しやすい。しかし、これはVPAP IIIで改良された。
2)機構やデーター開示に消極的である。充分な情報をディーラーに提供していない。