Metrant
R100図;R100の外観写真
1.特徴
 R100はカリオペαの成人バージョンの人工呼吸器で、小児〜成人を対象とする。ディスポ製品のカートリッジを介してHFOエネルギーを患者回路に伝えているので、ハミングVやカリオペαのようなHFO機構のメンテナンスの手間が軽減された。HFO振幅は350mlにも達する大容量タイプであり、R100は本格的に成人を換気できる貴重なHFO機である。
2.性能
1)利用できるモード
 A/C(VCV,PCV)
 SIMV(VCV,PCV)+PSV
 CPAP,PSV
 HFO
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 無呼吸バックアップ
 
2)基本データー
最大吸気ガス流量..........140LPM
最大換気回数...........80 BPM
HFO回数..................5-15 Hz
最大HFO振幅.........2ml(15Hz)-350ml(5Hz)
+SIGH(マニュアル)
 
3.制御回路、制御機構の解説
1)制御機構の概説
 ハミングVではメカニカルに流量調節をしていて、その分、機構が複雑であったが、R100ではマイクロプロセッサ−によって、吸気バルブと呼気バルブの開度をサーボ制御して換気圧を調節しているので、機構は簡略化された。
2)機械的機構の特徴
 HFO発生機構も大容量のストロークボリュームを得るためにハミングのピストン方式とは違う機構が採用された。
3)ガス流量計測
 吸気・呼気側ともに。熱線型が使用されている。呼気測のセンサーは加温フィルターによって保護されている。NOはセンサーが劣化させるので、NOの併用はできない。
4)吸気バルブ
 サーボバルブにより吸気ガス制御を行っている。通常はディマンド方式で、ベースフローは3LPMにフロートリガー感度の流量を加えた値であるが、HFOモードでは10-40LPMの定常流を供給する。
5)呼気バルブ
 呼気弁はサーボ制御によってPEEP/CPAP圧を調節している。HFOモードでは平均気道内圧を呼気弁で調整している。
6)HFO装置(図;R100のカートリッジの写真:ディスポーザルの大型カートリッジの採用により、メンテナンスが容易になった)(図;ロータリーバルブの写真
 HFOはブロアで陽圧と陰圧を発生し、これをロータリーバルブで遮断して振動を発生している。この振動はカートリッジを介して患者回路に伝達される。
4.ニューマティック回路図;R100のニューマティック回路図
 酸素、空気の各々のガスは、減圧弁、フローバルブを経て空気および酸素のフローセンサーに入る。パネルで設定された吸入酸素濃度になるように酸素と空気の比率が決定され、流量にかかわらずこの比率が保たれる。
1)通常換気、CPAP換気モード
 吸気中の気道圧コントロールは吸気フローのコントロールで行われる。呼気中はパネルで設定されたフロートリガー+3LPMのベースフローが流れる。PEEP/CPAP圧コントロールは呼気弁開度で行われる。圧トリガーのときはベースフローはゼロとなる。患者回路内圧が「吸気圧上限」警報設定値よりも高くなると呼気相に転換される。ガスは患者回路を通じ肺へ送られる。肺から呼出されたガスは呼気ラインを通じ呼気弁によりPEEP/CPAP圧を調整されて大気開放される。
2)HFO換気モード
 HFO発生機構によって作られた振動エネルギーは、カートリッジ(ディスポ)を介して患者回路に伝えられる。カートリッジには機械側と患者側の2室があり、真ん中に柔軟性のある膜で隔壁(ダイアフラム)が作られている。カートリッジの採用によりHFO機構の洗浄・滅菌の手間が省かれ、メンテナンスの労力が軽減された。
 R100の振動発生方法はブロワーモーターとロータリーバルブ、ダイヤフラムを採用している。構造は、ブロワーモーターで陽圧/陰圧を発生させロータリーバルブにより設定されたストロークボリュームと周波数になるよう振動に切換え、ダイヤフラムを通じて吸気側から呼吸回路内に振動を添加するようになっている。内部機構はこの振動発生制御部と換気機能をつかさどるニューマティック制御部に大きく分けることができる。吸気側は配管入力された各ガスが減圧弁とフローバルブ、フローセンサーを通過する。設定した酸素濃度に応じフローバルブにより流量を調節され(10-40LPMの範囲で設定できる)、定常流として呼吸回路へ送られる。吸気側にはダイヤフラム先端のインピーダンスバルブによりHFO時とコンベンショナル換気の吸気ガス流路を変更している。HFO時にはダイヤフラム側が開き、呼吸回路内に振動が伝わるようになり本体吸気ポート側が半開状態になり抵抗となる。これは定常流を流すが、振動が本体内に伝わり振動が減衰されることを最小にしている。コンベンショナル換気時にはダイヤフラム側が全閉になりダイヤフラムチャンバーがデットスペースになることを防ぐとともに本体吸気ポート側は全開になり最大フローが流せるようになる。呼気側には呼気フィルターが装備されていて、呼気中の細菌捕獲と呼気フローセンサーの保護に利用されている。
5.制御ソフト
 HFOとIMVは併用できない。
1)トリガー方式
 フロートリガー方式である。最高感度は0.5LPMである。圧トリガーも選択できる。この場合はベースフローはゼロとなる。
2)SIMV
 ハミングVと同じ、可変トリガーウィンドー方式である。
3)CPAPモード
 ディマンド方式である。CPAPはPSV圧をゼロとして作動している。もちろんPSVも併用できる。
4)PSV
 吸気終了条件(R100では呼気認識と表現されている)は、PSの際の実測最大吸気流量に対して、吸気流量がピーク値の10-45%に低下した時点をPS吸気の終了としている。10-45%値を選択できる。他には併用条件はない。
5)HFOモード
 HFOモードでは吸気バルブは単純に定常流を供給する機構として働く。平均気道内圧は呼気弁を制御して調節される。定常流量は10-40LPMの範囲でパネルにより設定できる。
6)手動SIGH
 HFOモードでは手動でSIGHボタンを押すと設定したSIGH圧を付加できる。SIGHボタンを押している時間を調節することでSIGH圧を加える時間を調節する。
7)無呼吸バックアップ
 「アプネア換気」は無呼吸になると自動的に起動される。自発呼吸を認識すると自動解除される。換気条件は通常換気の設定と同じである。アプネア換気回数だけ別に設定できる。ただし、アプネア回数は設定換気回数より少なくはできない。
6.操作体系図;R100のフロントパネル:主要な項目はつまみで設定するが、細かな設定は液晶パネルを利用して設定する)
1)最初に
 まず、「動作モード」を選択する。HFOとCPAPと通常換気がある。HFOとCPAPでは、直接つまみでおよその設定が可能であるが、通常換気ではA/CかSIMV、PCかVCを設定していかなければならない。PCもしくはVCは「PCV」「VCV」と表記されたボタンを押すと液晶パネルに「確認」もしくは「取消」ボタンを押すようにメッセージが表示されるので、それに従い、いずれかのボタンを押して確定する。
2)モードの設定(図;液晶パネルを利用したモードの設定方法
 A/CもしくはSIMVを選択するには液晶パネルを使用する。「選択」つまみを回すと、画面下にあるメニューバー(IMV設定、IMV警報、IMVデータ、波形、ループの項目がある)の選択項目をスクロールできる。選択した項目は青色に変化する。「IMV設定」を選んで、「選択」を押すと新たにA/C、SIMV、フロートリガー、圧トリガー、吸気波形、小児・成人、ライズタイム、(PSVでの)呼気認識、アプネア換気回数、プラトー時間、などを設定できる。
3)主要項目(図;主要な項目はつまみで直接設定できる
 一回換気量、吸気流量、吸気圧、吸気時間、換気回数、PEEP/CPAP圧、トリガー感度、酸素濃度、などはLEDの数値表示を見ながらつまみで設定する。HFOの設定も同様に、平均気道内圧、振動数、ストロークボリュームをつまみで設定する。
4)HFOの設定(図;HFOの設定画面
 振動数、平均気道内圧、ストロークボリュームは直接つまみで設定できる。HFOベースフロー、SI圧設定、MAP上限−1、MAP上限−2、アンプリ上限、アンプリ下限、などは液晶パネルを利用して設定する。
5)アラームの設定(図;アラーム設定画面図;アラームセッテイ画面の分時換気量下限を設定する画面
 液晶パネルのIMV警報を押すと、アラームセッテイ画面になる。吸気圧上限、吸気圧下限、PEEP下限、強制換気量下限、自発換気量下限、換気回数上限、分時換気量上限、分時換気量下限、アプネア監視時間、を設定する。
7.モニター、アラーム機能、ディスプレー機能図;グラフィック画面での3波形表示例
 液晶ディスプレーに数値や波形を表示できる。「IMVデーター」では実測数値を、「波形」ではフロー、圧、ボリュームの3波形を表示できる 「ループ」ではP/VカーブとF/Vカーブを表示できる。気圧上限、吸気圧下限、PEEP下限、強制換気量下限、自発換気量下限、換気回数上限、分時換気量上限、分時換気量下限、アプネア監視時間、を設定できる。
8.患者回路構成
 患者回路を図に示した。(図;R100の患者回路図
9.日常のメンテナンス
 患者回路やダイアフラムチャンバーは患者毎、もしくは最大1週間で交換する。呼気フィルターは患者毎もしくは最大2週間で交換する。
10.定期点検
 使用前に始業点検をおこなう。患者回路とHFOカートリッジ、バクテリアフィルターは患者ごとに、また、一定の期間で、交換、洗浄滅菌する。
1)3ヵ月ごと
 点検を受ける。
2)5,000時間もしくは1年毎ごと
 予備保守点検を行う。
11.欠点
1)パネルのつまみで直接設定できる項目と、液晶パネルで設定する項目があり、統一性がない。
2)液晶パネルが小さい。
3)SIMVやA/Cを設定するには他社の方法と異なるので予備知識が必要である。PCとVCの選択方法も同じようにルールが違う。