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NeoBeat図;ネオビートのの外観写真
1.特徴
 MERAは泉工医科工業のブランド名であるが、同社の開発を担当していたトラン・コック・フック氏が独立し設立した会社がメトラン社である。MERAハミングIIは、メトラン社の製造で、泉工医科工業が発売元となっていた。後にハミングIIは製造中止となり、メトラン社によりハミングVが新開発され、これは大同ほくさんが発売元となった。現在はいわき株式会社が販売している。一方、泉工医科工業株式会社の人工呼吸器部門が独立してスカイネット社となり、ハミングIIの販売権やメンテナンスを引き継いだ。そのスカイネット社が開発したのがネオビートである。したがってネオビートとハミングVは従兄弟の関係にあたる。ネオビートはハミング IIの後継機種で、ピストン駆動方式のHFO装置にIMVを組み合わせた国産の新生児用人工呼吸器である。ハミングIIに比べると小型、軽量、低消費電力、耐振動性、高精度、低価格、操作性などが改良点である。
2.性能
1)利用できるモード
(強制換気はすべてtime cycleの圧リリーフ換気で行われる。)
 IMV、圧リリーフ
 CPAP(定常流)
 HFO
2)基本データー
定常流量(固定)............12LPM(IMVモード)
       ..............8LPM(HFOモード)
吸気ガススルーレート... L/s
最大IMV回数.........50 BPM
HFO回数..................15 Hz(固定)
最大HFO振幅.........70pH2O、26.4ml
+SIGH
3.制御回路、制御機構の解説
1)制御機構の概説
 メイン制御ボードとディスプレーボードより構成される。マイクロプロセッサ−は、東芝のZ84(8ビット)が使用されている。 
2)機械的機構の特徴
 ネオビートの独自性は、モーターによるピストン駆動方式のHFO装置と、ジェットガスを呼気側患者回路へ逆噴射して呼気ガスに抵抗を作り、PEEP/CPAP圧を調整する機構にある。
3)ガス流量計測
 測定できない。
4)吸気バルブ
 定常流量は固定式で、吸気バルブは存在しない。定常流の流量は固定であり、HFOでは8LPM、IMVでは12LPMである。
5)呼気バルブ
 一般的な呼気弁は存在しない。ジェットガスを呼気側患者回路へ、ガスの流れと逆向きに噴射することで、定常流の流れに抵抗を生じさせ、患者回路内圧を高める。つまりIMVモードの最大吸気圧とPEEP/CPAP圧、HFOモードでの平均気道圧の調節は逆噴射量で決定される。しかし、逆噴射量と発生する圧には直線的な相関はなく、呼気側のガス流量やリーク量などに影響される。これを補正するのが、ソフトウェア学習機能を持つ制御機構である。
6)HFO装置(図;ネオビートのHFO装置
 ピストン駆動方式のHFO装置では、きれいなサイン波形が得られる利点があるが、ピストン内部に圧縮による水滴の凝集や、機構の摩耗の問題があった。ネオビートではピストンは水平に設定されていて、水滴はシリンダー下部の排水溝より自然排泄されるようになっている。ピストンは簡単に交換できるように露出した状態で設置されている。従来はHFOの振幅を調整するのに、ピストンのストロークを変化させていたが、ネオビートでは、ゴム製リザーバーへの吸収量を変化させている。そのため、駆動機構が簡素化されている。ピストンのストロークボリュームは標準では26.4mlであるが、オプションで30.1ml、33.9mlも選択できる。
7)ローパスフィルター(図;ネオビートのローパスフィルタ
 HFO駆動は呼気側より行われるが、この振幅が加温加湿器のチャンバーで吸収されないようにフィルター構造が設けられている。これは図  のように0.9mmの穴が13ヶ開けられていて、15Hzの早いガスの動きには抵抗となるが、定常流にはほとんど抵抗にならない。ハミングIIのインピーダンスバルブと比較すると、性能は同等で、簡単、安価で、高耐久性に優れる。
4.ニューマティック回路図;ネオビートのニューマティック回路
 O/Air配管より入力したガスは、それぞれのフィルターFL.1,FL.2を通り、ガスブレンダー(Bird microblender 3800)で酸素濃度を調整する。PS1,PS2は2.0kg/cm2以下に低下すると作動する圧力スイッチである。ブレンダー自体にもO/Airの圧格差が1.4kg/cm2以上になれば警報音が鳴る機構が設けられている。減圧弁PR3にて0.3kg/cm2に減圧したガスはFC1で8LPMの定常流に調節される。IMVモード時には電磁弁SV3が開きFC3の4LPMのガスが加わり合計12LPMの定常流になる。HFOの振幅が加温加湿器のチャンバーに吸収されないようにローパスフィルターLPFが設けてある。圧モニター回路にはFC2により200ml/minのパージ流が流れる。圧トランスデュサーPTは近位気道圧をモニターするが、電磁弁SV2により電源投入時ならびに4時間毎にPTを大気解放してゼロ点校正をおこなう。高気道圧アラームが作動すると、電磁弁SV1が開き、これが空気作動弁PVを開き吸気側患者回路圧を解放する。リリーフ弁RV1は60pH2O以上の圧を逃がす安全弁である。最高吸気圧やPEEP/CPAP圧、平均気道圧(HFO時)はジェットユニットJUでのジェットガスの逆噴射量で調節する。減圧弁PR2で3.0kg/cm2に減圧したガスは電空弁EPにて任意の流量に調整される。ピストンユニットPUはHFO発生装置で、振幅は小さなゴム製リザーバーに吸収させる程度を変化させて調節する。SV4はSIGH時にモーターの回転を止める電磁弁である。
5.制御ソフト
 HFOとIMVは併用できない。
1)トリガー方式
 現時点ではトリガー機構は計画になく、PTVはできない。
2)IMV
 12LPMの定常流をtime cycleで呼気ガスをジェット流で遮断して、吸気圧を調節する。
3)CPAP
 定常流方式のCPAPである。もし、患者の吸気要求.が供給量(=定常流量)を上回っても、バルブレスなので呼気側の回路ガスが再呼吸されるが、患者回路の圧低下は少ない。
4)HFO
 ピストン駆動方式のHFOで、この場合定常流は8LPMになる。SIGHはHFOモード時のみ有効で、SIGHボタンを押すとHFO駆動モーターはブレーキがかかり停止する。ボタンを押し続けても4秒で終了する。SIGH終了後は徐々にモーターの回転数が上昇するので、結果的に振幅と周波数が徐々に上昇することになる。
5)マニュアル換気
 HFOモード以外ではSIGHボタンを押すとマニュアル換気がおこなわれる。
6.操作体系図;ネオビートの操作パネル図
 最大吸気圧、PEEP/CPAP圧、呼吸回数、モード選択、酸素濃度、アンプリチュード(HFO振幅)をつまみにより設定する。アラームレベルはPEEP/CPAP(IMV)、平均気道内圧(HFO)に対して+/-2pH2Oが、最高気道圧、SIGH圧に対しては+/-4pH2Oが実測値に対して自動設定される。アラーム範囲を広げるには、「設定変更」のボタンを押す。押す回数に応じて、前者は、+/-3、+/-4、+/-5、+/-2pH2Oへ、後者は+/-5、+/-6、+/-7、+/-4と変化する。
7.モニター、アラーム機能
 換気量モニター機構はないが、圧アラームは警報だけでなく、大型LEDディスプレーに視覚的に表示できる。
8.ディスプレー機能
1)ディスプレー
 PEEP/CPAP、最高気道圧(IMVモード)、平均気道内圧、SIGH圧(HFOモード)の実測値を数値表示できる。
2)インターフェース
 RS232Cによるデジタル出力と気道圧のアナログ出力が用意されている。
9.患者回路構成図;ネオビートの患者回路
 患者回路を図に示した。
10.日常のメンテナンス
 使用前に始業点検をおこなう。患者回路、ピストンは患者ごとに、また、一定の期間で、洗浄滅菌する。ピストンは消耗部品なので、必ず予備を準備する。
11.定期点検
1)6ヵ月ごと
 定期保守点検を受ける。ピストンサイレンサーを交換する。
2)12ヵ月ごと
 ピストンリング、ピストンベアリング、ポリウレタンジョイント、酸素並びに空気のインレットフィルター、アンプリチュード調整バッグ、Oリング類、を必要に応じて交換する。
3)その他
 必要に応じて内部の消耗部品を交換する。
4)保守点検スケジュール
 6ヵ月ごとに設置場所にて簡易点検を受ける。1年目には工場にて総合点検、調整をおこなう。2年ごとにオーバーホールをおこなう。
5)ピストン
 ピストンの寿命は、定期点検およびオ−バ−ホ−ルを行なっていけば、5年間は大丈夫とメーカーはコメントしている。5,000時間ごとに点検をし、必要に応じて、テフロンリング等の消耗部品を交換する。ピストンシリンダ−の内面を特殊コ−ティング処理しているが、これがとれてしまうと寿命となる。
12.欠点
1)ピストンが外部にあるので保守管理はおこないやすいが、外見上スマートでない。
2)PTVができない。