株式会社アイビジョン
CLV90,ALV2000
株式会社アイビジョンは株式会社アイカ向けにCLV50およびCLV70をOEM供給していた会社であるが、CLV90開発直後にアイカ社が倒産したため、ALV2000なる別名で木村医科器械(株)によって販売されていた時期もある。その後、アイカ社の元社員らがエアウォーター社のサポートを受けて設立したアネス社がCLV90を販売することになった。現在、同一機種複数販売名(CLV90およびALV2000)で市場に出ているが、H19年2月以降はCLV90に統一される。CLV90はPCVやPSVなど人工呼吸器に必要かつ充分な機能をもつ国産ベーシックモデルであり、比例制御弁により最大120LPMの吸気ガスに対応する。
2.性能
1)利用できるモード
A/C(CMV)
SIMV+PSV
PCV
---------------------------------
+PEEP
+SIGH
無呼吸バックアップ
2)基本データー
最大吸気ガス流量
強制換気............120 LPM
PSV.................120 LPM
最大強制換気数......... 40 BPM
最大SIMV回数........... 24 BPM
3.制御回路、制御機構
CPUはモトロ−ラ社の32 bit マイクロプロセッサ MC68332 MHz である。圧のサンプリングレートは100回/秒である。
2)機械的機構の特徴
吸気側のフローセンサーや呼気弁ユニット、ブレンダーユニット、などの各ユニットは工場で組立てまたは整備に際して、「フローVS差圧」やバルブの「フローVS 回転角特性」などが一台ずつ測定されていて、そのデ−タ表がフラッシュメモリに保持されている。スイッチON 時に、このデ−タ表を各ユニットからCPUのRAMに読み込み精度補償をしている。
3)ガス流量計測
吸気側には差圧式のセンサーを使用する。リゼロバルブによりゼロ点を自動較正している。呼気側にはフローセンサーはない。
4)吸気バルブ
メインバルブは準線形特性を持ったアナログバルブである。その構造は内部にリング状の突起を有するシリコンゴムのチュ−ブを用いるピンチバルブで、このピンチバルブを完全に閉状態から約3 mm の約120 L/分まで変化させている。3mmの開閉は、直流サ−ボモータで直接駆動するボールスクリュ−機構により行なっている。
5)呼気バルブ
ガス駆動方式のバルーン弁である。PEEP/CPAP圧によるサーボ制御はされていない。
高圧酸素(3 ×100KPa以上の圧力)は、背面の入力ポートから入いり、フィルタF1 を経て電磁弁SL1に与えられる。電磁弁SL1は電源がONにされていれば必ず励磁されて開放されている。電磁弁SL1を通った酸素は、圧力レギュレータPRで0.3 ×100KPaに減圧されてO2/Air ブレンダ・システムの酸素側ユニットに与えられる。
エアは内蔵コンプレッサによって供給される。エア・コンプレッサの空気取り入れ口には、防塵除菌のフィルタF2 が取り付けられている。コンプレッサは電磁振動型ダイアフラムポンプである。コンプレッサは、二次側のブレンダ入口の圧力を0.3×100KPaに保つようにCPU から位相角制御を受けている。コンプレッサの出力ポ−トに、除菌と防音を目的とするエア・フィルタF3 があり、その後に出力圧を平滑化するための10 L 容量のタンクを経て、ブレンダ・システムの空気側ユニットに与えられる。
ブレンダは、酸素用と空気用の2台のユニットから構成される。2つのユニットは、ハ−ドウェアとしては全く同一の種類のもので、BV1(またはBV2)はCPU が決めた指定のフロー比を与えるモータ駆動のニ−ドル弁である。出側には低抵抗の逆止弁OV1(またはOV2)が設けてある。酸素または空気の圧源である0.3×100KPaを監視するための圧力センサPO2 またはPair のポ−トにはゼロチェック電磁弁SL2(またはSL3)が設けられている。
メインバルブはCPUの信号によってガス流量を自在に調整できるサーボバルブで、メインバルブを出た送気は、フローセンサユニットを通った後にメインブロックに達する。このブロックにはスプリングロ−ド方式の過圧安全弁と吸入安全弁を一体化したリミッタバルブが取り付けられている。過圧側は約90hPa(cmH2O)で開放を始め、負圧側は−7hPa(cmH2O)で開放を始める。患者気道内圧は、このブロックでゼロレベル取得のための電磁弁SL6 を通して測定される。メインブロックの出力は、外付けのバクテリア・フィルタを経由して患者へ送気される。
フロー測定は、100μのピッチのメッシュを流路の抵抗体として用い、メッシュ通過で発生する差圧を測定してリニヤライズしてフロー値を得ている。差圧は120LPMで約15hPa(cmH2O)程度であり,ゼロドリフトをキャンセルするためのオートゼロ用の電磁弁が組み合わせられている。
ネブライザをON にすると、ネブライザ−ポンプがON となり、ブレンダで酸素濃度設定された0.3×100KPa(sf/cm2)のガスが、ネブライザ−ポンプに供給され、ここで0.8×100KPa(sf/cm2)以上に加圧され、強制換気の送気時のみ開く作動用電磁弁SL9 を経てネブライザ出力に供給される。
呼気弁制御回路およびPEEP ユニットでは、0.3×100KPa(sf/cm2)に調圧された空気ガスの一部を分岐して、呼気弁の制御駆動圧にしている。この圧力の一つの分岐は、ニ−ドルバルブCV3 とCV4 で圧力を設定して呼気弁制御用の電磁弁SL8 を経て呼気弁に与えられる。他の分岐はニ−ドルバルブCV1 とCV2 の直列回路を通って大気に排出される。CV2 にはPEEP ユニットに含まれるニ−ドルバルブCV5 が並列に入っている。CV1 とCV2/CV5 の交点の圧力は電磁弁SL7 につながり、PEEP/CPAP が付加されている場合は、呼気相にSL7 からSL8 の排気口に与えられる。 CV2 はCV5 が閉塞している時、すなわちPEEP/CPAP が最大になった時の制御圧を定めている。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
圧トリガー方式である。OFF,-1~-10hPaで選択できる。ただしPSVなど自発呼吸には-1phPaに固定されている。
2)A/C
CLV90のA/Cは量換気のsCMVだけを意味する。吸気ポーズはEIPを選択すると0.3sec付加される。
トリガーウィンドーは固定時間方式で、SIMVサイクル時間の終末40%の部分に設けられている。トリガーウィンドーの期間中にトリガーを検出すると、強制換気が送られる。トリガーを検出しない場合にはトリガーウィンドーが終了した時点で強制換気が送られる。トリガーウィンドー以外のトリガーにはPSVが送られる。例外的処理としてPSV換気が開始した時点より設定吸気時間(強制換気)の2倍の時間が経過するまで、トリガーウィンドー中の強制換気を遅延する。
PSVはSIMVモードの中でのみ選択できる。SIMV回数を0BPMにすれば純粋なPSVになる。吸気終了条件は以下のとおりである。
(1) 吸気時間が2秒を超える。
(2) 吸気相開始後0.2 秒以降で流量が6 L/min 以下に低下。
(3)吸気相開始後0.2 秒以降で設定サポート圧+2hPa(cmH2O)まで気道内圧が上昇。
CLV90のPCVは一般的に用いられるPCVの意味ではなく、PC-SIMVの概念に近い。自発呼吸相では2cmH2OのPSVがCPAPとして与えられる。トリガーをOFFにもできる。
6)無呼吸バックアップ
SIMV回数を0BPMにすると無呼吸警報監視が行われる。30 秒以上自発呼吸トリガーがない場合は、無呼吸警報を発生し、固定パラメータ(TV=400,RR=10 ,I/E=1:2 )の調節呼吸(A/C)が30 秒間継続する。その後に再度自発呼吸モードに復帰する。もし自発呼吸を認識した場合に警報を停止して正常に戻る。しかし再度30 秒を超える呼吸停止が発生したら、固定パラメータの呼吸を連続して実行しながら医療行為者の介入を待つ。この間警報は介入がない限り持続する。
7)SIGH
すべての主モードにおいて付加することができる。頻度は2回/時固定である。SIGH が付加されると、SIGHキーの左上のLED(緑) が点灯するとともに、次に始まる強制換気にSIGH が付加される。強制換気を持たない呼吸モードでは次の自発呼吸のタイミングで付加される。その後2回/時の頻度でSIGHが付加される。SIGH は、A/C、SIMV+PSV、
SIMV、CPAP、PSV モード時は、設定吸気時間を1.5 倍(最大2秒)に延ばすことで設定一回換気量の1.5 倍(最大2000ml)を与える。PCV モード時は、設定PCV圧+2hPaになる。
8)ネブライザー
30分で自動停止する。吸気ガスよりポンプで駆動ガスを作るので、換気量や酸素濃度に影響しない。
9)レスポンス
3段階より選択可能。サーボ制御の時定数を変化させて反応速度を変えている。
モードをA/C、SIMV+PSV、PCVより選択する。A/Cは一般的にはsCMVである。SIMV+PSVモードではSIMV回数とPSV圧の設定により、SIMV、SIMV+PSV、PSV、CPAPモードになる。PCVモードは一般的にPC-SIMVと呼ばれるモードに該当する。この際にはPSVは付加されない。
その後に換気回数など必要な項目とオプション機能(SIGHなど)を設定する。A/CではI:E比を設定するが、他のモードでは吸気時間を設定する。SIGH付加時にはPCVモードでも一回換気量を設定する。次にアラームを設定する。
7.モニター、アラーム機能
無呼吸、気道内圧(下限・上限)、供給ガス圧、停電のアラームがある。気道内圧と設定圧、アラーム圧は液晶バーグラフで表示される。
8.ディスプレー機能
気道内圧を液晶バーグラフで表示する。吸気分時換気量も数値表示できる。
9.患者回路構成、呼気弁
10.日常のメンテナンス
呼気弁は分解の上、オートクレーブで滅菌する。吸気側フィルターはオートクレイブのみ可、滅菌25 回毎又は累積作動2,000 時間毎に交換。 呼気弁は、約20 回の滅菌毎又は点検時に漏れが発生する場合に交換。エアコンプレッサのインレットフィルターは累積作動3,000 時間毎に交換。
11.定期点検
5,000時間、10,000時間、15,000時間、20,000時間に定期点検若しくはオーバーホールを受ける。5,000時間および15,000時間はやや簡略レベルの試験点検になる。10,000時間および20,000時間では主要な摩耗部品、劣化部品の交換を含むオーバホールになる。
12.欠点
1)モード名が一般的に用いられている意味と少し違うので注意が必要である。
2)呼気測のフローセンサーがないのでリークなどにより低換気になっても警報されない危険性がある。
3)コンプレッサ内蔵で便利であるが、エア配管が利用できる環境であっても、外部入力端子がないので、エア配管よりのエアを利用できない。
4)モードの概念や酸素圧低下時の処理方法など、設計思想には少し違和感を感じる。しかし、きっちりと情報公開している企業姿勢には好感をもてる。