Respironics
BiPAP Vision
1.特徴(図;BiPAP Visionの外観写真)
 BiPAP Visionは最上位機種として1997年に発売された。Visionの名のとおりに大画面液晶表示が特徴で、3波形(フロー、ボリューム、圧)のグラフィック表示や各種の情報、機器設定情報、を表示できる。さらに最大フローや圧も強化され、酸素濃度設定やアラーム機能も内蔵された。高性能のPAV(Proportional Assist Ventilation)モードも搭載されている。
2.性能
 モード.............S/T,CPAP,PAV
 最大流量240 LPM
 吸気圧.....2〜40pH2O
 PEEP........2〜20pH2O
 呼吸回数...4〜80BPM
 rise time......0.05〜0.4sec
 ディスプレー.....3波形同時表示、データー表示
 
3.機構の概略
1)構成(図;BiPAP Visionの構造)
 外気より導入した空気はブロアーにより加圧される。IPAP圧に応じてブロアーの回転数は3段階に変化する。PVAは2つバルブ群で、IPAPやEPAPにおいて不必要な圧は放出してIPAP/EPAP圧を調節する。吸気ガス流量は、フローセンサーとリーク補正機構により推定するが、呼気ガス流量は、リーク補償のため必要とするガス流量が呼気ガス流量の存在により減少することより演算する。
2)改良点
 BiPAP Visionでは以下の改良が加えられている。@ブロアーを高容量のものに変更している。AバルブアッセイもS/T 30では1個であるが、rise timeの調整のためにもう1つバルブを追加して、2連式になっている。2つのバルブは連動していない。B最大流量を高めるためにこれらのパーツは直線的に配置されている。Cグラフィックディスプレーを設けている。そのために一部にデジタル回路が導入されている。しかし基本的な部分はS/T 30, S/T-D 30と類似でアナログコンピューターで構成されている。
 
4.トリガー条件
 BiPAPのように回路リークが前提の換気法では、リーク補正がしっかりしていないとトリガーを正確に捕捉できない。さらに独特のトリガー条件を用いて誤動作を防いでいる。これらは以下のように命名されている。
1)Expiratory Flow Rate Adjustment(図;BiPAP Vision,EFA説明図
 EPAP時間が5秒以上になれば、患者の呼気ガスは存在しないはずである。この時点でのガス流量をEPAP時での回路リークと見なし、ベースライン(フロー)をBreath by Breathで再設定する。この方法は確実であるが、EPAP時間が5秒以上ある頻度は場合によってはあまり期待できない。そのため次の方法も併用する。
2)Tidal Volume Adjustment(図;BiPAP Vision,TVA説明図
 回路リークがなければ、吸気ガス量と呼気ガス量は同じはずである。つまり吸気ガス量と呼気ガス量の差は回路リークと見なせるので、両者の差がなくなるようにベースライン(フロー)を再設定する。
3)Volume Trigger
 ベースラインガス流量(前述のリーク量を補正した)を超える吸気ガスの量が6mlに達するとIPAPが始まる(S/Tモードでの自発呼吸)。
4)Shape Signal(図;BiPAP Vision,SS説明図)
 Shape SignalとはRespironics社独自のトリガー方式で、IPAP-EPAP、EPAP-IPAPへの移行に関与する。患者のフロー波形(実測値より推定回路リーク量を除いた推定値)を15LPMオフセットし、150mS遅延した波形をShape Signalと呼ぶ。患者のフロー波形とShape Signal波形を比較し、これらの線が交差する時点でIPAP、EPAP相を終了させる。この概念の本質は、実測した値から変化の著しい時点を検出していると考えられる。
5)Maximam IPAP Time
 自発呼吸時にはIPAPを最大3秒に制限し、これを超過するとEPAPになる。
6)Spontaneous Expiratory Threshold(図;BiPAP Vision,SET説明図
 IPAP時間の経過とともに、IPAPからEPAPへの移行する流量条件(terminal flowとも呼ばれる)を経時的に上昇させる。この場合IPAP時間が長くなる程、IPAPからEPAPへの移行が起こりやすくなる。
5.操作(図;BiPAP Visionの操作パネル)
1)一般操作
 ディスプレーに対応したファンクションキー設けてあり、メニューに応じてキーを押して選択する。数値はつまみ入力する。
2)設定
 機器の装着に先立ち、まず、呼気ポートテストモードに入り、呼気ポートやマスクでのリーク量を測定する必要がある。次にオペレーションモードに入り呼吸モードを選択する。S/Tモードの意味は、S/T 30, S/T-D 30のそれとは若干異なる。S/Tモードは基本的にはPSV+PEEPと類似の換気モードであるが、設定した換気回数以下に自発呼吸数が減少すればtime cycleでIPAPが開始し、time cycleでIPAPが終了する。つまり換気回数の設定値によって決まる一定の時間内にトリガーがなければPCV+PEEP類似になる(BIPAP類似?)。IPAP Rise Timeを設定すると吸気圧立ち上げ時間を設定できる。さらに酸素濃度、アラーム設定を行うと設定操作は完了する。
3)呼吸回路
 鼻マスク回路(non invasive)と気管挿管用回路(invasive)が利用できる。患者回路には必ずバクテリアフィルターを装着する。
6.モニター、アラーム機能
1)モニター(図;BiPAP Visionのグラフィック表示例)(図;BiPAP Visionのバーグラフ表示例
 フロー、ボリューム、圧の3波形をグラフィック表示できる。換気量や換気回数、リーク量など、設定値や実測値を数値表示できる。バーグラフ表示もできる。 
以下のの項目がある。気道内圧上限、気道内圧下限、無呼吸、低分時換気量、呼吸回数上限、呼吸回数下限、内部バッテリー電圧低下、機器不良、圧ラインはずれ、圧制御不良、酸素供給不良。
7.メンテナンス
 背面パネルフィルター、酸素モジュールフィルターは適宜点検、交換する。1年ごとに定期点検を受ける。